『武士の一分』
☆☆1/2 安っぽさと重厚さの混沌。
山田洋次の藤沢周平三部作の最後を飾るこの作品、残念ながら『たそがれ清兵衛』のレベルには達することができませんでした。それはキャスティングに起因する問題。山田洋次らしく美術に関するディティール、また時代考証に関するこだわりが感じられるのですが、演じ手の力量で画面の空気がころころ変わってしまいます。たとえば坂東三津五郎や笹野高史がうつっているとちゃんと時代の空気が出てくる。セットでも全然安っぽくない。ところが木村拓哉や檀れいが出てくると何か安っぽくなる。それはただ単に私が抱いているイメージとの乖離なのかもしれませんが、木村拓哉が剣術で三津五郎には勝てる気がしませんし、少なくとも所作やせりふ回し、貫禄の部分で明らかに足りない物があります。時代劇の可能性を感じさせてくれた意欲作を期待しただけに残念です。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント