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2008年9月30日 (火)

訃報:ポール・ニューマン

 米俳優のポール・ニューマンさんが9/26、がんのため死去しました。享年83歳。2007年5月に出演したTV番組で老齢による演技力の低下などを理由として俳優引退を発表し、その後肺ガンで闘病中との報道がなされていました。病院でのガン治療から本人の希望によりコネチカット州の自宅で療養生活を送っていたそうです。
 1925年1月26日、オハイオ州クリーブランド生まれ。家業のスポーツ用品店を継ぐためにオハイオ大に進学。50年からイェール大の演劇科で学び、52年にはニューヨークのアクターズ・スタジオに入学。同期にはジェームズ・ディーンやマーロン・ブランドがいたのは有名です。ブロードウェイの舞台「ピクニック」の演技が高い評価を受け、1954年『銀の盃』で映画デビュー。以降『傷だらけの栄光』(1956)で注目を集め、『熱いトタン屋根の猫』(1958)でアカデミー賞主演男優賞に初ノミネート。『ハスラー』(1961)、などでノミネーションを重ね、実に個人として受賞する『ハスラー2』(1986)までに7回のノミネートを要します(ちなみに死ぬまでにノミネーションは8回)。また映画監督としても『レーチェルレーチェル』(1968)でアカデミー賞作品賞など4部門で候補になっています。映画関係以外にも数多くの顔を持ち、まずはカーレーサーとして、デイトナ24時間レース5位、ル・マン24時間レース2位などの記録を残していますし、実業家としても82年に設立した食品会社「ニューマンズ・オウン」で発売したサラダドレッシングやスパゲティ・ソースが世界的なヒットをしています(余談ですがおいしいですよ!)。またその純利益を全額、恵まれない子どもたちに寄付した功績を認められ、1993年のアカデミー賞でジーン・ハーショルト友愛賞もおくられています。私生活では最初の結婚生活は破綻しますが、2度目の相手、ジョアン・ウッドワードとはおしどり夫婦として知られ、共演作や自らの監督作での主演などもあります。しかし1978年には長男が薬物におぼれ死んでしまうという悲劇も経験しています。
 代表作は数多くあり、ロバート・レッドフォードと組んだ『明日に向って撃て!』(1969)と『スティング』(1973)、序列でのエピソードもおもしろい『タワーリング・インフェルノ』(1974)、ルメット、そしてニューマンにベストワークにあげる人も多いであろう『評決』(1982)などがあります。遺作は『カーズ』(2006)のボイスキャストでした。
 大人になってから憧れが増した俳優さんでした。もう思い出に残る作品がたくさんありすぎですね。『評決』『ハスラー2』もそうですが、やはり『暴力脱獄』のニューマンが格好良さではダントツでしょう。また『シャドー・メーカーズ』のグローブス将軍の鬼気迫る演技も印象的です。また『ガラスの動物園』は映画監督ニューマンをもっと評価すべきだということがわかる佳作でした。うん、遺作が『カーズ』のあの役というのはよかったと思います。
 ご冥福をお祈りします。

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2008年9月29日 (月)

メガネの不具合?

 いや、なーんで『セックス・アンド・ザ・シティ』が秋だったはずなのにと思っていたらそういうオチだったとは。このニュースはノーチェックでした。とりあえず興行的に4人組、そして『ハムナプトラ3』にはラッキーな展開だったようですが、『センター・オブ・ジ・アース』にはもっともっと辛い展開になりそうです。気になるのはその原因。特殊メガネの不具合というのは製造上のミスと言うことでしょうかねぇ。正直しっくりこない理由です。

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2008年9月28日 (日)

『ラッキー・ユー』

Luckyy ☆1/2 なぜここまで客を裏切る?
 カーティス・ハンソンの新作は昨年地味な公開をされていたので、私も見逃していたのですが、なるほどこれはヒットしないはず。だって地味で日本人には馴染みのない題材で、その上後味がすっきりしないわけですからね。
 この作品はポーカーの世界選手権をクライマックスにしているのですが、よくぞここまでドラマの山を崩したと思うほど、ドラマチックな展開を裏切ります。『シンシナティ・キッド』もわりと淡々と進行しましたが、これは淡々とではなく、そういう展開はいやだなあという方に行くのです。これは主人公の人物設定がそうだからで、このあたりの好みは分かれるところでしょう。実際私もここまで破滅型でありながら魅力のない人物像には正直お手上げ。さらに相手役のドリュー・バリモアがいかにもドリュー・バリモアな役どころでおもしろくも何ともありません。結局得(?)をしたのは映画どおりロバート・デュバルだけでした。
 へぇポーカーの世界選手権ってこんな感じなのね、という驚きを得たい人はどうぞ。それ以外の方にはおすすめしません。

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2008年9月27日 (土)

渡辺文樹が!

Fumiki  私の住んでいる街にも掲示されているのをみつけました。こうしてポスターがあるとやはり驚きます。相方は「?」でした。確かに知らない人には何のポスターがさっぱりわからないかも。

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2008年9月26日 (金)

『我等の生涯の最良の年』

☆☆☆1/2 極上のホームドラマ。
 ウィリアム・ワイラーのオスカー受賞作。いや、みるつもりはなかったのですが、幕開けからついつい見入って最後まで。うん、やっぱりこの時代の作品は違いますね。クラシックという表現がふさわしく、どきつい表現はなくとも、きちんとドラマの本質と向き合おうとする気概があります。だって第2次大戦後わずか1年です。それでいてこの内容。ステレオタイプな描き方が散見されたり、表層的な描き方になっているという指摘も間違ってはいないと思いますが、むしろ傷痍軍人までひっぱりだしつつも、扇情的な描写をしなかったことと、この時代には異色の大長編(170分)でありながらありがちなメロドラマにしなかったことを称えるべきでしょう。同時期のヨーロッパ作品は自国が戦場になっているわけですから、戦争の影がかなり色濃く、それはそれで鮮烈な作品が数多く生まれています。しかしこの作品はさまざまな社会的地位の人に影を落とした戦争の影を、ホームドラマの体裁をとりつつも足かせにはせずに、それゆえに地に足のついた物語にしています。回想シーンで戦場の場面などはまったく挿入されないにも関わらず、心の傷を感じさせるのはワイラーの演出力の勝利でしょう。また名手グレッグ・トーランドのカメラが紡ぐ語り口の素晴らしさ。このモノクロで切り取ったスタンダードフレームの美しさと簡潔さにはほれぼれします。演技陣ではフレデリック・マーチの素晴らしさに唸りました。
 最近映画らしい映画をみていないというあなたにはお勧めの、見事な作品です。

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2008年9月25日 (木)

『アラビアのロレンス』

Dloar ☆☆☆ 砂漠の中で感じた孤独。
 オールタイムベストテンなどでは必ず顔を出す作品の中で、わけあって私の未見作品リスト(?)の中に長いこと眠っている作品があります。たとえばシリーズものの1本目をみてからでないとつまらなそうとかの場合などですが、もう1つの大きな理由で大画面でないと意味がなさそうな作品があります。たとえば『ベン・ハー』『十戒』。大型フォーマットで作られた作品は、できるかぎり大スクリーンでみたいと考えています。しかし以前ほど大劇場でのリバイバルが叶わない今、少しずつでもHD放送でみていこうかと思っています。そのうちの1本だったのがこれ。ずっと前にHD放送されたものをやっと夏の休暇中にみました(だって長いしなあ)。
 部族間の衝突と、長としての宿命の大河ドラマの中で、どこの誰にも属すことができなかったロレンスの孤独は、雄大な砂漠を背景にして圧倒的な説得力をもって迫ってきます。折り目正しいきっちりとしたドラマ作りはデビッド・リーンならでは。セルジオ・レオーネとは違う意味で、けっして急くことのない展開は彼の真骨頂と言えます。すこし世界史の背景を知っておく必要はありますが、西欧諸国にとって異文化体験物語のフォーマットはこういうものなのでしょう。ピータ・オトゥールもさることながら、やはりアレック・ギネスのくせ者ぶりが印象に残ります。さあデビッド・リーンの大河ドラマがあと2本、REC-POTに長いこと眠っています(『ドクトル・ジバゴ』『ライアンの娘』)。これは年末年始ですかねぇ。なんて思ってたらなんと『アラビアのロレンス』がリバイバル決定。場所はテアトルタイムズスクエアって、元アイマックスシアターじゃないですか! まあ35ミリでもちょっとはよい環境で楽しめるかもしれません。

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2008年9月24日 (水)

久石譲in武道館

 NHKでオンエアされていました。こうやって並べるとみーんな曲調が似た感じで、正直眠たくなりました。サブタイトルが宮崎アニメと共に歩んだ25年間となっていますが、スコアの完成度としては北野武監督作品の方が充実している気がします。でも最高傑作はきっと『トンマッコルへようこそ』かな。

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2008年9月23日 (火)

カナザワ映画祭2008 フィルマゲドン

やはりすごかったようですね。

カナザワ映画祭2008 フィルマゲドン

 毎年すごいことになっているのは知っていたのですが(昨年は鈴木則文特集)、今年の目玉はやはりクリスピン・グローヴァーのビッグスライドショウでしょう。蛇足かもしれませんが、まずクリスピン・グローヴァーについて。古いところだと『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のマーティのお父さん。最近だと『チャーリーズ・エンジェル』のヤセ男などメジャー作品にも出演している人ですが、この人かなり個性的な人でして、まず『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の2と3は出ていません。メインキャストの交代はこのトリロジーでは2役ありました。そのうちのマーティのガールフレンドの場合は、2と3で出番が増えるのでもう少し力のある人をとのことだったのですが、こっちの場合はクリスピンが固辞したとのこと。なので2と3では新撮されている場面はなく、イメージ映像だけで顔を写さないやり方をメインにしたため、かなりやりにくそうでした。(これはこれで訴訟沙汰になり大変だった) で、そっちを断って出たのがティム・ハンター監督の『リバース・エッジ』。キアヌ・リーブスや、デニス/ホッパーが出演したことでも知られる本作、私はこれでこいつはフツーじゃない!と直感したわけでした。でもゼメキスの『ベオウルフ』ではボイスアクターで出てたりして(まあ、これはキャプチャーで大変な役で、しかもすんごい役だったので楽しかったに違いない)別に険悪でもないらしいですが。
 で、この人が監督作が2本あって、そのどれもがかなり強烈な作品らしく、その上、上映形態が自身のスライドショーとセットでないと上映しないらしいようです。ソフト化なんてもっての他なわけで、みること自体が希少価値を持っています。その上、この2本というのが三部作の1と2なのですが、連続上映されること自体滅多にないことらしく、それが金沢でみられるということで柳下さんの周辺どころか、柳下さんに影響を受けた人大集合になったようです。ちなみにいつも上映後にグローヴァーは自著のサイン会をするらしいのですが、そのときにほとんどの客がこの上映会を知るきっかけが柳下さんのサイトでびっくりしたらしい(笑)。 
でもいくら三連休でもなあ。仕事を抱える2児のパパに金沢は辛いです。本当に誰か、もう1度呼んでくれい!
ちなみに覆面オールナイトは渡邉文樹作品だったということで、本当にすごすぎる映画祭です。

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2008年9月22日 (月)

訃報:市川準

 映画監督の市川準さんが19日未明、脳内出血のため東京都渋谷区の病院で死去しました。享年59歳。この日まで新作『buy a suit スーツを買う』の編集をしており、その直後に倒れたそうです。
 1948年東京都出身。1975年にCM制作会社に入社してCM演出家になり、1981年からフリーランス。禁煙パイポ、タンスにゴン(金鳥)、エバラ焼肉のたれ、ヤクルトタフマン、デューダ等で印象的な作品を数多く残します。1987年『BU・SU』で映画初監督。その後もクレイジーキャッツが総出演して話題になった『会社物語 MEMORIES OF YOU』(1988)、『ノーライフキング』(1989)、『竜馬の妻とその夫と愛人』(1990)、『トニー滝谷』(2004)などを監督しました。最後の監督作は『あしたの私の作り方』ですが、前記の『buy a suit スーツを買う』が東京国際映画祭での上映予定作品になっており、どのようになるかが気になるところです。
 CM出身にもかかわらずいわゆる映像派ではなく、かといって今までの日本映画の見得いっぱいの演出とは違うナチュラルなスタイルは新鮮でした。特に内館牧子の映画シナリオデビュー作でもある『BU・SU』は見事な作品で、むしろ今の中高生の方も共感できるところが大きいのではと思います。
 ご冥福をお祈りします。

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2008年9月21日 (日)

町山智浩氏と田山力哉氏

町山智浩さんは数少ない私が信頼している映画評論家です。「映画秘宝」という存在を作った一員であるだけでも素晴らしいのですが、私が信頼している理由として
・(少なくともほめるべき作品を間違わない)審美眼がある。
・(常識的に知るべき)古い作品を知っている。
・(当たり前だけどやる人は少ない)自分に必要な取材をしている。
・(これも当たり前だが)まともな文章が書ける。

その町山さんがエキサイトしています。

この文章、なんか似たことを誰か言っていたなあと思い出したのが、同じく映画評論家の田山力哉さん。彼の著作『さよなら映画、また近いうちに』の中で彼は映画界における現状を嘆いていますが、その中の「映画の害虫は消え去れ」でおすぎ氏に対して強烈な批判を書いています(私も評論家と名乗る人間が広告に出ることは絶対にやってはいけない禁じ手だと思います)。また「映画評論家は信じられていない」でも評論家のあり方に一石を投じています。(余談ですがこの本には町山氏の妹、町山広美氏が出てくるくだりがあり、そう考えると不思議な縁を感じます)。
 町山さんと田山さんはスタンスはかなり違いますが、この2人に共通することが2つ。まずは文章力。町山氏が本でもまとめている「映画秘宝」連載の「イエスタディ・ワンスモア」での検証力と、田山氏が残した評伝小説の構成力は、取材と分析でうみだされる論文的説得力があります。
 もうひとつは大好きな作品をきちんと評論家として応援する姿勢。もし町山さんがとりあげなかったら『ホテル・ルワンダ』を知らなかったでしょうし、田山氏がとりあげなかったら特攻隊で命を落とした唯一のプロ野球選手、石丸進一を描いた『人間の翼』を知らずにいたでしょう。
 彼の酒に関するエピソードやその生き方には賛否両論あると思いますが、もし彼の評伝小説を読んだことがない方はぜひ読んでみてください。市川雷蔵、田宮二郎、そして渥美清。彼らが持つ影が何だったかをきちっととらえた作品ばかりです。
 そんな田山さん著作『市川雷蔵かげろうの死』の素晴らしさに私は感激して、ファンレターを書いたことがあります。その頃私は元住吉に住んでいましたが、氏が日吉に在住されていることもあって、どこか親近感を覚えたというのもありました。すると後日丁寧なお返事(下の写真)をいただきました。すごくうれしかったことを覚えています。そうかあ、もう田山さんが亡くなって11年にもなるんですねぇ。
Rikiya

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2008年9月20日 (土)

ああ、なんということだ!

マキノ雅彦の『次郎長三国志』などどうでもいいのだが、なんとオリジナルのマキノ雅弘監督の東宝版『次郎長三国志』が、時代劇専門チャンネルで一挙放映しているらしい。無念! 全然知りませんでした。とりあえず意地でも残り少ないチャンスを逃さないようにせねば。

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2008年9月19日 (金)

『バトルスター・ギャクティカ』シーズン2 #14

ついにスタートした!(そういや私のシーズン1へのコメントのエントリが途中で終わっていたのはご愛敬) アダマ艦長がとんでもないことで終わってからやきもきさせられること、はや半年! やっとシーズン2です。

#14『船団崩壊』
いきなりはりつめた雰囲気で物語はスタート。なにしろギャラクティカ、コボル、カプリカなどで同時進行的に物語が進む上に、どこも待ったなしの状況になっている。バトルシーンもいきなり全開。

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2008年9月18日 (木)

すぐに買えない時代なのです

 いよいよメジャースタジオのうち、リリースが停止していたパラマウントとユニバーサルが国内でのブルーレイリリースを本格化させるようです。ただどうも触手をそそられないのは、やはり割高感があるからでしょうか。これでさくっとキャンペーン価格などでやられた日にゃあという感じがして、どうもすぐに購入する気分になれないのです。
 気になるところとしてはWHVからの3タイトル。『暴力脱獄』『卒業白書』、そして『ショーシャンクの空に』。前記2タイトルは映像特典も一新されてのリリースです。ただWHVの場合、米国盤で日本語字幕が入る可能性もあるので、値段的に横にらみ。こっちもすぐには買えませんな。

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2008年9月17日 (水)

『フレディVSジェイソン』

Fvj☆☆ まっとうだけどそれまでの出来。
 以前CATVでやっていたのを途中からみていまして、やっと全部見ました。いや、別にそんなにおもしろいわけではありません(笑)。かつての東映まんがまつりでよくやっていた異種格闘技戦のようなヒーロー対決みたいな興奮を感じさせるタイトルですが、作り方はもうこれしかないという感じになっており、さらに両方のファンにきちんと目配せした内容になっています。またスプラッタムービーとしてもゴア描写にぬかりはなく、きわめてまっとうな作りになっているのには驚きました。しかしそれ以上の物はなく、後半はどうせよみがえるんだもん、もう好きにしてくれと投げやりになるような展開。『エルム街の悪夢』はおもしろかったなあと思わず遠い目。

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2008年9月16日 (火)

訃報:楠田浩之

 撮影監督の楠田浩之氏が13日、肺気腫と心不全のため東京都大田区の自宅で死去しました。享年92歳。
1916年東京都出身。1934年に松竹蒲田に入社。何といっても木下恵介監督とのコンビ(義理のお兄さんでもあります)が有名で、彼のデビュー作『花咲く港』(1943)から、1967年の『なつかしき笛や太鼓』までずっとコンビを組みます。なんと撮影監督としてひとりだちしてからの50本のうち、他の監督と組んだのはわずか5本のみ。木下監督にいたっては、この間他者に任せたのは『陸軍』のみという名コンビだったといえます。木下監督による日本初の劇場用カラー映画『カルメン故郷に帰る』(1951)、印象的なマスキングによる『野菊の如き君なりき』(1955)、そして独特の舞台的な演出が光った『楢山節考』(1958)などの作品で存分にその腕を発揮した名キャメラマンでした。昨今木下監督の評価が以前ほどでないのが残念ですが、これらの名作を残したスタッフというだけでも大きな功績といえると思います。ひとつ不思議なのがク1967年の作品を最後にフィルモグラフィがつづかないこと。まだ50代という脂がのりきった頃になぜ作品を残さなかったのか(ちなみに木下監督もこの時は不遇で、9年近く作品を発表していない)。このあたりをご存じの方、ぜひ教えてください。
 ご冥福をお祈りします。

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2008年9月15日 (月)

遠征決定

 シガーロスチケット争奪戦に敗れました(涙)。追加公演でもあっさりとれないとは・・・。というわけで万が一用の名古屋公演のチケット(かなりいい席なのだ!)の出番と相成りました。遠征なんだけど、仕事は休めないので日帰りだ・・・。

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2008年9月14日 (日)

「CG進化論 映画でたどるCG45年史」

WOWOW独自のドキュメンタリー。黎明期からロバート・エイブル、『トロン』などを経て現在までに至る歴史をわりときちんと追いかけたドキュメンタリー。インタビューもほほうと思う顔ぶれが並び、まっとうな内容になっていると思うのだが、画竜点睛の感がぬぐえない。
<理由>
・デジタルエフェクツとCGIが混同されている。
・『スター・ファイター』が抜けた。
 他にもエポックメイキングと呼べる作品がかなり抜けている。
・ILMの関係者のインタビューがまったくない。

うーん、もったいないですねぇ。

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2008年9月13日 (土)

ROCK IN JAPAN FESTIVAL

今年はちょっとWOWOWに失望。(いや、いつもお世話にはなっていますから感謝もしてますよー) というのも毎年恒例のフジロックのオンエアをしてくれないのだ! なぜか今年はCSフジ(BSではないところが腹ただしい)で、WOWOWはROCK IN JAPAN FESTIVALをやるそうな。まあねぇ、確かにこの顔ぶれだと需要はこっちかなあ。個人的にはサマソニをHD映像で楽しみたいのだが、こちらはいつもどおりMusic-Onでのオンエア。はあ。というわけで見ちゃいましたよ、こっちを。邦楽に関しては最近すっかり無頓着なので全然知らない人ばかり、上の娘はPerfumeに大興奮。あとは何か、みんなあおいやねぇ。うん、なんかこう重い存在感を持つ人がいなくて寂しい。サンボマスターは立ち位置をきちんとわかっているのがえらい。スピッツ、Base Ball Bearが期待はずれ。トライセラトップスとか、奥田民生とかは要反省でしょう。木村カエラには拍手。笑ったのが筋肉少女帯、自虐的すぎです。素晴らしかったのが鬼束ちひろ。これを単独ライブでやられるとつらいものがあるだろうし、正直クイーンのカバーはバツだったのですが、それでもあの「ホタル」の歌いっぷりにはほれぼれ。よくぞ復活してくれました。このフェスで一番得をしたのではなかろうか。

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2008年9月12日 (金)

訃報2件

全然この2人の訃報を知りませんでした!

アイザック・ヘイズが、8/10メンフィスの自宅で死去しました。享年65歳。
ミュージシャンですが、映画とのつながりは深く、まずは何といっても『黒いジャガー』(1972)の主題歌「シャフト」、これでアカデミー賞とグラミー賞を受賞。その次はジョン・カーペンターの大傑作『ニューヨーク1997』の悪役デューク。私はこれで彼を知りました。そして近年では『サウスパーク』のシェフのボイスキャスト。晩年はサイエントロジーに関する問題で『サウスパーク』を降板したりして、正直残念な部分がありました。

俳優バーニー・マックが、8/9肺炎合併症のため、シカゴ近郊の病院で亡くなりました。享年50歳。
1957年にシカゴで生まれ、俳優、コメディアンとして活躍します。FOXテレビではホストをつとめた"The Bernie Mac Show"が01年~06年までに100エピソードを重ねる人気番組に。映画でも『オーシャンズ11』シリーズで知られるようになります。『チャーリーズ・エンジェル フル・スロットル』では前作のビル・マーレイがギャラでもめて降板した役を引き継ぐキャラクターで登場しました。まだまだこれから活躍が期待された人なのでちょっと残念です。

ご冥福をお祈りします。

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2008年9月11日 (木)

『シンドラーのリスト』

 我が家の場合、夜はCATVがついていることが多くて、特に日本映画専門チャンネルか、ムービープラスです。特にムービープラスはほとんどが見ている作品が多く、安心してつけていられます。しかしときどきオンエアされているとついついみてしまうという作品があります。別に作品の出来不出来には関係なく、自分の状況に左右される(現実逃避?)ことが多いのですが、そんな中でじっくりと最近みてしまったのが『シンドラーのリスト』。NHKのBSHiでのオンエアで残念ながら2ch音声だったのですが、それでもすぐにプロジェクターでうつしてみちゃいました。 この作品については賞狙いが露骨だとか、あまりにもユダヤ人寄りだという批判がありますが(スピルバーグがそういうスタンスではないということは、後の『ミュンヘン』で証明されたと思います)、しかしそれでもここまでの長尺をみせきってしまう演出力はやはり本当にすごい。特に名もなき人々の名前とその存在1人に1人にかけがえのない重さがあることをきちんと描けていることに脱帽します。オープニングで次々と名乗る人々の名前には観客は最初何の価値も見いだせない。しかしこの映画をみていくうちに印象深い顔がエピソードと共に心にひっかかっていきます。ゆえにオスカー・シンドラーが「もっと救えたのに」と泣き崩れるところで、私たちも「これほどたくさんの人々を救ったではないか」と思えるのです。私は初日にWMC海老名7でみました。dts+THXのシネマサウンドで味わったあの乾いた銃声(ゲート所長が並んだユダヤ人を次々と殺す場面)は本当に怖かった。だから最後のイツァーク・パールマンのバイオリンの響きには魂をゆさぶられたし、エンドロールでのピアノで奏でられたジョン・ウィリアムズのテーマ曲のリプライズにはほっとしたと同時に、すごい映画をみた時にしか味わえない、自分がどこにいるかを忘れてしまうようなあの感覚に襲われたのです。

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2008年9月10日 (水)

『ラストキング・オブ・スコットランド』

Lastking☆☆1/2 ひとごとにしない表現とは?
 フォレスト・ウィティカーがオスカーを獲得した本作。私も題名をきいてなんでウガンダがスコットランド?なんてとんちんかんなことを考えていたのですが、製作者の意図を端的に表現したタイトルでした。
 世間一般の評価では暴君となっているアミン大統領を少年のような純粋さと猜疑心の固まりのような人物としてとらえ、そこに白人の無責任な思惑をスコットランド人医師ニコラスに反映させて絡ませたのはおもしろい試みです。つまり現地の人の気持ちなど知ったことではない。アミンの行動に対してニコラスの言動は観客の同情をひくことはありません。つまり両方ともどっちもどっちなのだということです。しかし映画のできばえとして微妙な評価になってしまうのは、どうもひとつひとつの表現が静物画的で、ドラマとしての説得力に欠けたこと。本来介在するはずの現地の人々を体現するキャラクターが存在しなかったために、住んでいる人々まで自業自得的な突き放し方を表現から感じてしまうのです。ここは同じ声なき人々の地獄を描いた『ホテル・ルワンダ』や、一部だけ出てくる『ロード・オブ・ウォー』の方が説得力を持っていました。悪い作品ではありませんが、できばえは今ひとつといったところです。
 ウィティカーは悪くありませんが、これならば『バード』の彼の方が素晴らしかったです。他方のジェームズ・マカヴォイは好演。この人、ひょっとしたら化けそうな感じがします。

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2008年9月 9日 (火)

スティングレイさん、いつもありがとう

いまだ冷めぬ『夕陽のギャングたち』ネタ。ちょっとした解説ページをみつけました。今は発売元は東宝になっていますが、これはallcinemaでおなじみスティングレイが最初に発売していたので、きっとそこが作ってくれたページでしょう。どのメーカーもこの十分の一の熱意があるだけでも、いいんですがねぇ。

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2008年9月 8日 (月)

評論家を名乗ってるんでしょう?

福本次郎という映画評論家のまとはずれぶりがちょっとした話題になっている。

破壊屋さんのブログ
町山さんのブログ

何しろこのサイトのアクセスランキングで、、その嘲笑の対象になった批評が上位に来ているのが笑えます。まあ映画ライターで信頼できる人がどこまでいるかというのは難しいし、人によっていろいろだと考えているが、そんな間口のひろい私でもこれには笑った。

『デイ・オブ・ザ・デッド』の批評

あなた、ゾンビ物を本当にみてる? ゾンビのダッシュなんて最近珍しくないでしょ。そしてこの映画が60点だったら、他のゾンビ物にあなた何点つけんのよ。ポイントはつかんでない、必要な知識がない、読んでいてみる気が起きないなんて・・・。同じサイトの、あの前田有一ですら、もう少し書くツボはおさえているぞ(ドングリの背比べだが(笑))。映画文筆業に必要な物を自分で1度検証してみたらどうでしょうか。

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2008年9月 7日 (日)

ベネチア映画祭の結果をきいて

 とりあえずあの3本じゃなくてよかったです。ヴィム・ヴェンダースら審査委員が選んだ金獅子賞はダーレン・アロノフスキーの"The Wrestler"。前作の『ファウンテン』がさんざんだったので、この新作はちょっと楽しみです。

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2008年9月 6日 (土)

「解かれた封印 ~米軍カメラマンが見たNAGASAKI~」

 日曜日は家族で『篤姫』をみたあと私がNHKスペシャルというパターンが最近増えています。時節柄最近は戦争に関するものが多かったのですが、この回は胸えぐられる衝撃がありました。
 ジョー・オダネル氏のことをドキュメンタリーでとりあげたのはTBSの方が先だったようですが、このドキュメントは昨年亡くなったオダネル氏がなぜ内密に撮影し、それを晩年まであけることはせず、やがて母国を告発し周囲から非難を浴びるような行動をとったかをご子息の行動と肉声テープで丹念に追いかけていました。『父親たちの星条旗』でも描かれていましたが、戦争は勝った方にも負けた方にも深い傷跡を残すのです。彼の行動についてはいろいろな意見があるでしょう。しかし人間の良心ゆえに黙っていられなかったことは彼の写真が私たちに伝えています。そしてこのジョー・オダネル氏の行動が日本人である私から心よりの感謝を伝えたいのです。
 G8下院議長会議が今月広島で行われたことにも何人かの政治家の人が開催地にこだわっていたという話が報道されています。ゆえに米国の現職要人として初めて広島を訪問するという出来事が現実になったのだと思います。こんな人々の勇気と誠実さに私たちはいつも大切なことを教えられるのです。

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2008年9月 5日 (金)

訃報:三村晴彦

 このニュース知りませんでした。仲倉重郎さん(『きつね』の監督さん。この作品にぴんと来た人は映画歴が私と同世代です)のブログで知りました。

 映画監督の三村晴彦氏が8/2、上腸間膜動脈閉鎖症で死去しました。享年71歳。ずっと加藤泰監督の下で助監督をした後、1983年に『天城越え』でデビュー。『彩り河』『愛の陽炎』『瀬戸内少年野球団・青春篇/最後の楽園』の4本を監督した後、活躍の場をテレビにうつしました。正直好きな作品はなく、一般的にも知名度が高い方ではありません。しかし私がちょうど映画を見始めた頃に、いわゆる撮影所の助監督出身者の最後の大物として鳴り物入りのデビューを果たした人でした(もう1人は東映の澤井信一郎『野菊の墓』)。その彼が結局劇場用作品を4本しか残せず・・・。そういう意味で運命とはとちょっと考えてしまった次第です。
 ご冥福をお祈りします。

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2008年9月 4日 (木)

訃報:市川崑

これも抜けてました。

 映画監督の市川崑氏が2/13、肺炎のため都内の病院で死去しました。享年92歳。
 1915年11月20日、三重県生まれ。1933年、東宝京都スタジオに入社し音声漫画部に所属。45年に人形劇『娘道成寺』を手掛けた後、東宝争議もあり新東宝へ。47年『東宝千一夜』で監督デビュー。1955年、日活に移り、翌1956年の『ビルマの竪琴』が、ヴェネチア国際映画祭サン・ジョルジュ賞、米アカデミー外国語映画賞ノミネートなど高い評価を受けました。その後も『炎上』(1958) 、『野火』(1959)、『おとうと』(1960)など多くの名作を生み出します。総監督を務めた1965年『東京オリンピック』は配収12億5000万円を記録する一方で、記録映画か芸術かの一大論争を巻き起こしたことも有名。70年代に入ると『犬神家の一族』(1976)、『獄門島』(1977)など一連の横溝正史原作の「金田一耕助」シリーズでヒット作を連発。80年代は『細雪』(1983)、『おはん』(1984)など文芸大作を手がけました。2006年『犬神家の一族』を30年ぶりにセルフリメーク。2007年公開のオムニバス映画『夢十夜』の1編『第二夜』が遺作となった。また1948年に脚本家の和田夏十さんと結婚下後、彼女とは1949年の『果てしなき情熱』以降、83年に和田さんが亡くなるまでほとんどの作品でコンビを組んでいます。
 1960年代から70年代には名作を数多く残しているのも紛れもない事実で、実は私、それほど好きな作品がないのです。正直私がリアルタイムでみていた80年代以降、「当たり」は少なく『鶴』『竹取物語』などの「珍品」の方が多かったと思います。ただその柔らかなライティングや独特のタイトルバックなど、日本の監督には珍しく映像のスタイルでも記憶される監督だったのは特筆に値します。また実は(結果論かもしれませんが)邦画史上に残るヒットメーカーだったとも言えます。またスタートがアニメーションだったせいか、アニメに関わる仕事もたくさんあります。これで邦画黄金期の1969年に4人の巨匠が組んだ「四騎の会」のメンバー(他は黒澤明、木下惠介、小林正樹)は全員鬼籍には入りました。私の市川崑のベストは『幸福』(1981)。この映画は権利関係の問題で現在ソフト化されておらず、フィルムセンターのプリントでしか上映されない幻の名作です。
 ご冥福をお祈りします。

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2008年9月 3日 (水)

『エレクション』

Election☆☆1/2 もうひと工夫というのは贅沢?
 ジョニー・トーが作り上げたずばり黒社会(原題)は、突発的な暴力や、彼独特のユーモラスな間合いは健在でしたが、やや私には肩透かしの感がありました。いつもなら必ず彼の作品にある印象的な場面もあまりありませんでしたし(しいて言うなら木箱ぐるぐるかなあ)、この世界で生きるには誰もが手を汚さねばならないわけですが、その心の内がもうひとつみえてきません。その前の『PTU』や『ブレイキング・ニュース』の先鋭的なオリジナリティの方に魅力を感じたからかもしれません。サイモン・ヤムは役不足、レオン・カーフェイの加齢ぶりに驚き(白竜みたいだった!)。この作品には続編もありますので期待したいと思います。

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2008年9月 2日 (火)

『ラスト・エンペラー』ブルーレイに落胆

 やられた。既報のThe Criterion Collectionでのブルーレイ。『ラスト・エンペラー』の仕様がわかりましたが、なんと1枚。おお、1枚で両バージョン収録とはやるなあと感心していたら、なんと劇場公開版のみの収録と(DVD版は両バージョン収録で4枚組)。しかも長時間バージョン以外の映像特典がDVD版とすべて同じってあなた・・・、そんなあ。まあ今所有しているリージョン1版がそのバージョンなのでよしとしますが、こっちのバージョンの方が好きなのでちょっとがっかりです。しかもアメリカの方ではテレシネを監修したビットリオ・ストラーロがアスペクト比率を1:2.0に変更したこと(オリジナルはテクノビジョン撮影の1:2.35)が不評をかっています。うーん、どうするかなあ。

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2008年9月 1日 (月)

『武士の一分』

Bushiic☆☆1/2 安っぽさと重厚さの混沌。
 山田洋次の藤沢周平三部作の最後を飾るこの作品、残念ながら『たそがれ清兵衛』のレベルには達することができませんでした。それはキャスティングに起因する問題。山田洋次らしく美術に関するディティール、また時代考証に関するこだわりが感じられるのですが、演じ手の力量で画面の空気がころころ変わってしまいます。たとえば坂東三津五郎や笹野高史がうつっているとちゃんと時代の空気が出てくる。セットでも全然安っぽくない。ところが木村拓哉や檀れいが出てくると何か安っぽくなる。それはただ単に私が抱いているイメージとの乖離なのかもしれませんが、木村拓哉が剣術で三津五郎には勝てる気がしませんし、少なくとも所作やせりふ回し、貫禄の部分で明らかに足りない物があります。時代劇の可能性を感じさせてくれた意欲作を期待しただけに残念です。

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