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2008年8月 9日 (土)

『救命士』

Bringuout☆☆ 失われた映像的カタルシス。
 スコセッシ作品には3つのパターンがあります。ベースは偏執的描写。しかし枝葉をうまく整理できたときと思い入れが暴走するときで、そしてただの独り言レベル。これで作品自体の出来不出来が決まります。おそらく最初の例が『グッドフェローズ』で、2番目が『アビエイター』、3番目が『アフター・アワーズ』でしょうか。これはおそらく3番目です。
 描かれている世界はまさに世紀末の『タクシー・ドライバー』(脚本も同じくポール・シュレイダー)。舞台も同じニューヨークで主人公は不眠症(こっちは寝不足か)。しかしあの作品と決定的に違うのは主人公を取り巻く状況があっちは勝手な自己妄想であったけれども、こっちはそれなりに理解ができる状況にあること。でも撮影監督がオリバー・ストーン作品でおなじみのロバート・リチャードソンなのですが、そのせいか『ナチュラル・ボーン・キラーズ』みたいな感じがします。どうも軽いのです。ゆえにこの作品はもう少し命をめぐる重みをきちんと描くべきでした。医学的なバックボーンと現実の医療が直面している部分のディテールが抜けた分、映像的なカタルシスがなくなりました。それがあってこの内容ならば傑作ブラックコメディになったかもしれません。ニコラス・ケイジってこの程度の役者さんじゃないんですがねぇ。ジョン・グッドマンやトム・サイズモアには大笑いです。

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