『クローン』
☆☆1/2 あらすじを追いかけただけ。
アイデンティティの揺らぎ、真実と思っていたことがそうでなかったというシチュエーションが多いフィリップ・K・ディックの作品群。プロットとしては実に魅力的な原作ですが、映画化した作品はなかなか成功しているものがありません。『ブレードランナー』は名作ですがディック的とはいえない部分が魅力になっていますし、『トータル・リコール』『ペイチェック』はただのアクション映画。『マイノリティ・レポート』と『スクリーマーズ』にかろうじて匂いが残っている程度でしょうか。ディックの世界を描くに当たっては、やはり強固な世界観と登場人物を濃密に描く演出力が足りないと説得力がないのではないでしょう。この作品は短編「にせもの」の映画化なのですが、駄作ではないものの、あらすじを追いかけているだけで終わってしまっています。この作品も悪くはないものの、サスペンスとしては一流半でドラマとしては二流です。ゲイリー・シニーズをはじめとする役者陣はそれなりに健闘していますが、追跡側のドノフリオと協力をするメキ・ファイファーの描き方はもうひと声で、特にメキ・ファイファーの方はもう少しきちんと描き込めば最後が効いたと思います。
まずは予備知識なしでみることをオススメします。お得感はあるB級作品です。
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