『イースタン・プロミス』
☆☆1/2 ヴィゴの存在感が圧倒的すぎ。
クローネンバーグの新作は、そのまま東映やくざか香港ノワールかといった世界ですが、相変わらずひねりが効いています。時に西部劇の流れ者のような感じさえします。しかしクローネンバーグが描く闇は漆黒で、ここに爽快感はないのはご想像の通りです。とにかくヴィゴの存在感が圧倒的で、クローネンバーグ色というよりは、ヴィゴ・モーテンセン色に染まった感じがします。ここは評価が分かれるところで、前作『ヒストリー・オブ・バイオレンス』が物語をミニマムにすることで普遍性を獲得したのに対し、今回はヴィゴ演じる主人公が背負うものがもうひとつみえてこないので悲劇性が生み出されてこないのが残念です。これは前述のとおり、ヴィゴの存在が大きくなりすぎてしまい、他のキャラクターとつりあいがとれなかったことが要因です。アーミン・ミューラー・スタールとヴァンサン・カッセルが素晴らしかっただけに、もしここに『戦慄の絆』のような世界観が加わったら、恐ろしい傑作になったのではと思います。
(シャンテシネ1にて)
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