『ギャング・オブ・ニューヨーク』
☆☆ この作品もテロの被害者か。
うわあ、これはこまった。きっとスコセッシ渾身の1本になったはずなのです。しかし9.11のテロが影を落とします。私たちがみることのできるのは完成品。まずはそこからきちんとみていきましょう。
描かれるのはスコセッシ得意の世界。『グッドフェローズ』『カジノ』のような血で血を洗うドラマに実は彼の得意なコスチューム物(『エイジ・オブ・イノセンス』)まで入って、私たちの世界が暴力の積み重ねによってできあがったことを語ります。リーアム・ニーソンvsダニエル・デイ・ルイスの戦いから幕を開けて、ディカプリオ演じる残された息子がルイスに接近するところまではわりといい感じで進みます。ダニエル・デイ・ルイスは本当に見事で、この複雑なキャラクターを怪演。しかしながらディカプリオにはまだ荷が重かったか、いくらなんでもそれはという卑小でござかしいキャラにしかみえません。本当は男の成長をみせて、やがてルイスを乗り越えて、けれども自らがルイスのようになってしまう(そうそう、『ゴッドファーザーPARTII』のように)というのが本筋だったような気がします。しかしほぼ撮影が終了した段階での大事件発生によりこの作品はまったく別物になった可能性があります。結果的に制作が1年近く中断し、暴力のあり方が問われる世論の中で、きっとスコセッシは相当悩んだのではないでしょうか。
とにかくダニエル・デイ・ルイスを堪能しましょう。しかしそれ以外にはあまりみるところのない作品で、スコセッシらしさを期待すると落胆するでしょう。そういう意味でこの作品もテロの被害者なのかもしれません。
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