『しゃべれども しゃべれども』
☆☆☆ さわやかな後味の人情話。
私は落語が好きなので、この作品をとても楽しみにしていたのですが、いやいや上々のできばえにうなりました。さすが快楽亭ブラック師匠のイチおしなだけはあります。
まず「話す」ということへの切り口がおもしろい。話し方教室で香里奈が途中退出することをめぐって国分太一と口論になる場面を入り口にしたのが成功しています。ここだけでもいっぱしの落語論になると思いますが、そこからは敷居をぐっとさげてわかりやすい物語にしています。正直エピソードの枝葉の取り方やキャラクターの描き方にもう一声ほしいところではあるのですが、まあうまくいった方ではないでしょうか。個人的に一番の不安要素は主役を国分太一がやることだったのです。しかし彼は落語はそれほどではないけれど二つ目の空気はよく出していました。教わる方3人はまあこんなもんでしょう。伊東四朗はいつもながらうまい。それから邦画にしては美術にそれなりの手間暇がかけられたのが印象的で、映像設計が安っぽくなっていなかったのもよかったです。
よくできた人情話のような品のよさを持つ、さわやかな後味の残る佳品です。
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