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2007年12月28日 (金)

『ロード・オブ・ウォー』

Dlordofw☆1/2 中途半端ゆえに後味が悪い。
 とにかくものすごく後味が悪い映画です。『ガタカ』のアンドリュー・ニコルが作り上げた戦争風刺作品は、どこか中途半端で観客の居場所を作らないまま、自分も迷子になってしまうような作品でした。
 実話ネタをベースにした移民出身の主人公が、その類い希な商才を武器市場でのセールスマンとしていかしてしまううちに大成功をおさめてしまうというプロットはとてもユニークです。ブローバックして薬莢が出てくる時にレジの効果音を重ねるセンスは素晴らしいと思いますし、時折窮地に陥った主人公のリアクション(暴君的な将軍のとある残虐行為に対して「中古品になる!」というツッコミは最高です)にはハッとするものがあるのですが、そういうシニカルな視点は続きません。かといってシリアスに終始するかというとそうでもありません。その原因は2人のキャラクターにあります。1人はイーサン・ホーク演じる捜査官。本来はもっと四角四面なキャラクターが演じるべきだったのだと思いますが、これがニコラス・ケイジと対になる存在になりませんでした。それからもう1人は主人公の弟。このジャレッド・レトが演じる弟がただのだらしない弟と誤解されかねない人物にしかなっていないために、普通の神経を持った人間ならば苦悩するであろう側面が浮かび上がりませんでした。その上、ニコラス・ケイジの演技がこの作品ではまったく冴えがなく、首尾一貫したトーンを失っています。そのため本来だとぞっとするあの最後の取り調べでのやりとりがまったく効いてこないのです。前半は風刺的でありながら、自らの行動で試されるというシリアスな展開はデビッド・ラッセルが監督した『スリー・キングス』のように中途半端な印象を与えます。こういう作品では毒を笑いでオブラートすることに意味があるわけで、シリアスな展開になっただけに、あのエンディングの主人公の言葉に観客は苛立つしかなくなってしまいます。
 あの『ガタカ』は一瞬の輝きでしかなかったのでしょうか。そう嘆いてしまいたくなる凡作です。

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