『弓』
☆ 大間違いな上、趣味が悪い。
キム・ギドク作品をみるのは3作目。はっきり言います。これはひどいです。
性的なメタファーをとりいれた寓話は古今東西問わずたくさんあるのですが、背徳というのは禁忌であるからこそ人々は魅力を感じるのであって、やはりあの老人の恋はたとえ非現実の世界でも絶対に叶ってはいけないと思うのです(だってあなた、ナボコフの『ロリータ』がハッピーエンドだったら、そしてヴィスコンティの『ベニスに死す』がハッピーエンドだったら)。その時点でまず大間違い。さらにメタファー自体が露骨すぎて趣味が悪すぎます。メタファーは観客の想像力を刺激するから意味があるわけで、そういう意味であの後半の展開には怒り心頭。そもそもこの老人の行動が示唆されるとおりのものなのであったら、その時点で私は許せませんし(なんだ、あのカレンダーは!)、ありえない音色で弓の演奏が奏でられたのには興ざめ。こうなってくるとすべての表現にうんざりしてきてしまいました。
才人が技巧に溺れた作品はどんな芸術の分野でもみる人を不快にさせるだけです。
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