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2007年10月12日 (金)

『トンマッコルへようこそ』

Welton☆☆☆ 土着性を消化しようとした足跡を確かめられる力作。
 惜しい! けれど素晴らしい! 韓流とは一線を画すこの作品はアジアならではの味がある、しかし土着性を消化しようとした足跡を確かめられる力作でした。
 戦争を題材にしたファンタジーというのは昔からよくある物語で、この作品自体にも目新しさはありません。さらに物語の展開やエピソードの揃え方にバラツキが大きく泥臭さが抜けません。そういう部分は良くも悪くも韓国映画だなあという感じが否めないのですが、少なくとも自国の政治背景をこういった寓話的題材にしてとりあげているのは、まだまだこの国の映画事情に可能性を感じます。つまり『シルミド』『JSA』のように直接的な訴えを持つ硬派な作品もよいのですが、このようにそういう政治背景を普遍的な物語にして語ろうとする姿勢は、難しいけれども避けてはいけない所だからです。今の日本映画が抱えている問題はここで、タブーに切り込まない、みんなが抱えている問題に突っ込まない、そしてそれを普遍的なレベルまで表現を引き上げようとしない、みんな半径5mレベルの自省作品になってしまうわけです。なのであのエピローグは「うまいなあ」と思います。後味が悪くなりそうな展開に、人々の祈りのように、そして観客の願いのようなあの場面を織り込んだのは少なくともご都合主義ではなく、クリエイターのポリシーと良心を感じます。
 役者陣はみな味わいがあり、特に『シルミド』のチョン・ジェヨンと、『復讐者に憐れみを』のシン・ハギョンは2人は強い印象を残します。またカン・ヘジョンはこの映画を体現するかのような役回りで儲け役です。また久石譲さんが初めて担当した外国語映画作品でしたが、これが見事にはまっていました。ひょっとしたら彼の作品では近年のベストスコアかもしれません。
 何十年に1本の傑作になりそこねた作品です。それでも水準以上の作品であることに違いはなく、見応えがある1本です。

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