『河童のクゥと夏休み』
☆☆1/2 解き放たれた縛りが変える難しさ。
あの原恵一監督の5年ぶりの新作です。もうそれだけで胸がわくわくでした。なかなか上映時間が合わないで困りましたが、ようやくみました。原監督はご存じの通りシンエイ動画の社員として『エスパー魔美』、そして『クレヨンしんちゃん』シリーズの劇場版が長編作品としてフィルモグラフィを積み重ねた人です。私が一番注目していたのはここでした。つまり物語やキャラクターの世界観のしばりがなくなった時に、はたして作風はどうなるのか?という点です。
さすがに原監督。正攻法できちっと物語を語ります。クゥちゃんとの交流を中心にした描写は丁寧で、いかにも監督らしいです。ただクゥの存在が周囲に大きく影響を及ぼすのはわかりますが、いくら何でも欲張りすぎ。もっと削ぎ落とすべきだったでしょう。これだけ詰め込むと138分の長尺もうなずけます。本来はクゥではじまりクゥで終わる物語である以上、クゥの眼からみた世界にきちんと絞るべきだった。康一の学校での物語は余計でした。さらにあまりにも誠実ゆえに息苦しさがあったのも事実で、しんちゃんのギャグがいかにありがたかったかがわかります。これを言ってしまうと元も子もないのですが、この作品しんちゃんシリーズの枠内でやったら大傑作だったかもしれません。つまり何が言いたいのかというと、あえてしばりを作る必要はないと思うのですが、自分のフィールドをどう構築していくかというのはクリエイターの大きなテーマのはずです。今回はそういう意味で原監督の本当の処女作といえたのかもしれません。
力作です。一見の価値があります。しかしややご祝儀込みかもしれません。次、5年後はなしですよ。せめて3年ぐらいのサイクルでお願いします。
(MOVIX本牧3にて)
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