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2007年8月31日 (金)

『グラインドハウス U.S.A.バージョン』

PlanetDeath☆☆☆ 映画館ならではの鑑賞体験再現作品。
 これだけは見逃してなるものかと最終日に。こういうのが好きな人は六本木大集合になったみたいですが、これを六本木のTHXシアターでみるというシチュエーションは別として、ひっさびさに大笑いさせてもらいました。やはり映画館でみんなでわいわい言いながらみる作品であることに間違いはありません。問題はそれがわかっていない人と客席内でかなり温度差があったこと。だから東京ファンタは閉塞的な状況になったわけで。このあたりは難しいところです。とりあえずこのバージョンで上映されることは本当にないらしいのですが、フェイク予告編があまりにも素晴らしすぎたので、それも含めて。

<マチェーテ>
『スパイ・キッズ』シリーズに登場するダニー・トレホ演じるキャラ主演?のアクション物の予告編。監督はロドリゲス。もうこれで大爆笑。トップギアという感じ。
<プラネット・テラー>
 ロバート・ロドリゲスにとっては朝飯前という感じで、そんな余裕が吉と出ています。十八番をきっちりみせるけれんは素晴らしいです。懐かしい顔がたくさん出ているのもマル(マイケル・ビーン!)。リールとびの演出もバッチリ!
<ドント>
エドガー・ライトのホラー物予告編。70年代ホラーの予告編をみたことがある人ならばアゴがはずれそうなぐらいの面白さで(みたことない人はDVDの特典でチェック。本当にそっくり!)、Don'tの連呼にしびれました。
<サンクスギビング>
感謝祭をネタにしたスラッシャー物の予告。監督はイーライ・ロス。いやちゃんと80年代スラッシャー物の雰囲気がよく出ていて感心しました。
<ナチ親衛隊の女狼>
ロブ・ゾンビ監督の予告ですが、これだけ元ネタがよくわからなかったのであまり笑えませんでした。でもあの男の登場には笑った。あんたオスカー俳優でしょうが、一応・・・。
<デス・プルーフ>
タランティーノ節が炸裂しているのですが、もしこれ単独だったらおもしろくない!になってました。いやカート・ラッセルの豹変ぶりとかツボは多いのですが、あくまでも2本セットなのでバランスがとれていたかと思います。やはり私はこの人との相性は良くないのかもしれませんね。
(TOHOシネマズ六本木ヒルズ2にて)

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2007年8月19日 (日)

『野獣死すべし』

Dvyaju☆☆ 全編松田優作。
 松田優作の代表作でしたが未見。もう全編松田優作。だから松田優作臭に耐えられない人はみられないと思いますし、事実私も辟易した部分があります。『地獄の黙示録』『ディア・ハンター』の影響のせいかわかりませんが、最後の方なんてやりすぎです。しかしこういう生を実感できない焦燥感は今の方が理解されると思います。こういう作品で彼とがっぷり四つに組んで、彼をある意味で「コントロール」できる人材がいるとよかったのではないかと残念に思います(それができた数少ない人間が森田芳光ではなかったのか)。若き日の鹿賀丈史に戦慄。

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2007年8月18日 (土)

『ハード キャンディ』

Dvhard☆☆ 直接的な描写でも怖くない。
 最後のXメンでもっともキュートだったエレン・ペイジが出ているというので興味がわいた1本。何と共演がパトリック・ウイルソン。おお、今月3本目だぁ。こんな具合に意図せずに短期間に出演作を集中して鑑賞することが私の場合よくあるのですが、それはヘンなことなのでしょうか? 作品としては消化不良のスリラー。女性が男性をというパターンは実は結構あって『ミザリー』『白い肌の異常な夜』などが思い浮かびますが、この作品は直接的な描写が多いにもかかわらず、スリリングな怖さを感じさせられないところが問題です。結局この2人の背景をはっきりとみせなかった(それはそれで意図としてはわかるのですが)ことで、謎解きなのか心理スリラーなのかどっちつかずになりました。またエレン・ペイジにも消化不良にさせた原因があり、役不足という意味もあって彼女はミスキャストだと思います。しかしパトリック・ウイルソンは面白い個性の役者ですねぇ。基本的に大根系なのかと思いますが、役に対するアプローチや作品選びには「おっ」と思わせられる点があり、今後も注目でしょう。

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2007年8月17日 (金)

『オペラ座の怪人』

Phantom☆☆1/2 映像的な再構築が不充分。
 私の周囲では賛否両論だったこの作品。それほど悪くなかったというのが率直な印象です。劇団四季版はみていたものの、その舞台のあまりに凡庸な表現力(特に演技陣)にがっかりしていたのですが、少なくともオリジナルはそうでなかったことが確かめられただけでも収穫といえます。シュマッカーは正攻法で映像に置き換えようと試みており、オープニングのシャンデリアのシークエンスなどは見事です。ただあまりにも筋を追いすぎたキライがあり、かえって足かせになっている部分も(たとえばマスカレードのナンバーのところ)あって、映像的な再構築は充分だったとは言えません。ジェラルド・バトラーは歌はともかく作品にアクセントを与え、エミリー・ロッサムもその可憐な存在感と透明感のある歌声はぴったりです。あとパトリック・ウィルソンが出ていたのにはびっくり。
 なおもう一つのトピックとしてさんざん盛り上がった戸田女史の字幕は、これに関しては相当難儀になる仕事だという覚悟が足りなかったのでは?と感じました。

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2007年8月16日 (木)

シャープさん、ばんざい!

 このお盆休みを前にして、実はわが家のHDDレコーダー、シャープのDV-AR12が故障しました。DVD-RWでの記録がうまくいかなかったのですが、素晴らしかったのはシャープの対応。サービスに連絡をしてラッキーなことに2日後(お盆休み前の最終日!)前に来てもらうことになったのですが、なんとその場でメンテナンス完了になったのです。これにはびっくりしました。さらに驚いたのはその手際のよさ。ドライブに原因があるらしいとのことで、ドライブ交換をするにあたり、サービスマンの方に「少し(ラックから)30センチぐらい前に出せますか?」と聞かれたので、上の機器類をどかせば大丈夫だと答えると、なんと本当に少しだけ前に出して、外カバーをはずしました。つまり後ろの配線類をまったく抜かずにラックから完全に出さない狭いスペースではずしたのです。さらにその状態でドライブの交換も終えてしまいました。後ろからのぞいてみると実にシンプルな設計をしています。こういう製品でまず考えられるのは駆動系の部品ですからメンテナンスのことも考えた場合、そこの交換をしやすいように設計されているのだと感心しました。機械ですから故障するのは仕方がありません。でもわが家のシアターがこうしてお盆休みにも楽しめたのはシャープのサービスさんのおかげです。ありがとうございました!

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2007年8月15日 (水)

メモリーオーディオプレイヤー

この夏メモリーオーディオプレイヤーを買い換えました。以前はパナソニックのものでしたが、その使いにくさ(特に転送速度の遅さ!)にうんざりしていました。で、もともとiTUNESで楽曲を管理しサーバーにためていたこともあり、今回はiPODの80GBにした次第です。容量的にもサーバー内の楽曲データ量をようやく超えるサイズだったので、バックアップの意味もありました。それにしてもすでに8000曲近くのMP3データがあり、さらに過去MDで録っていたものをコツコツとデジタル化していますが、まだ200枚近くあり、相方からは面倒ならやめてしまえば?と突っ込まれ、・・・。自分でも笑ってしまいます(汗)。

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2007年8月14日 (火)

『ハイテンション』

Dvhight☆☆ なぜそういう謎解きにこだわるのだ!
 フランス産スプラッタとしてその筋では話題になった作品です。劇場公開時には北米公開版でファンの怒りを買ったそうですが、WOWOWオンエア版はフランス語オリジナル版。中盤まではかなりいい感じで進むのですが、なぜそういう謎解きにこだわるのだ!とみんな思ったはず。後半はいただけません。後から考えるとつっこみどろこ満載です。何もしなくても田舎、知らない所は充分怖いのですから。ただしイーライ・ロスより演出力は数段上。注目株です、この監督。さあアレもみるぞ。

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2007年8月13日 (月)

『さらば冬のかもめ』

Dvlastd☆☆1/2 ニコルソンは若い時から魅力的。
 ハル・アシュビーとジャック・ニコルソンという魅力的な組み合わせ。ロードムービーとしてはよくできていて、日本でもこういう作品はあるものの、かなりドライな部分もあって、ニューシネマ的。そのあたりのディテールの部分の「温度」を体感できない部分もあるせいか、しっくりといかないところがありました。ニコルソンは若い時から魅力的だということを再認識。そしてランディ・クエイドがまだやせていて、実はエミネムと似ていることを発見。ではエミネムは太るとランディ・クエイドか?

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2007年8月12日 (日)

UIP解散

 現在米メジャーの再編にともない、国内の配給も大きく様変わりしようとしています。まず最大手のUIP日本支社が37年の幕を下ろし今年いっぱいで解散します。世界各地の支社が今年初めから順次解散してきて最後に残ったのが日本支社でした。なおロンドンにある本社も2009年で解散するそうです。
 1970年にパラマウント映画とユニバーサル映画が50%ずつ出資して設立されたCICがスタートです。この会社は北米地区以外の海外配給をするにあたって共同の会社をたてることで経費を削減するねらいがありました。やがて1985年にMGM/UA(現在は別々)も参加し、UIPとなります。そんな大手4社なワケでかつてはわが世の春を謳歌していました。東宝系の洋画作品はほとんどUIPということも多く、事実2000年以前の歴代興収ベストテンでは5本がUIP作品でした。ところが今では2本のみ。しかもそれは90年代の作品で2000年以降は長い低迷期に入っていました。年間興収でトップになったのは2000年の『ミッション:インポッシブル2』が最後。ベスト5に入ったのも2005年の『宇宙戦争』が久しぶりでした。
 ところが数年前、MGMとユナイトが離脱。さらにこの秋からユニバーサルも日本国内の配給を東宝東和に委託することを決定したので、パラマウント1社になりました。そのパラマウント社は、現在DVDとビデオを取り扱っているパラマウントHEを主体とした新会社を設立するようです。サンスポの記事によると「4社を統合してきたときより興行的強みがなくなった。ハリウッド映画も10億円台の中級作品がなく、100億円の大当たりする作品もあるがはずれると2~3億円と大コケしてしまう。大物プロデューサー不在も大きな原因です(同社三苫雅夫宣伝部長)」とのこと。
 FOX、WB、SPE(MGMの権利も現在ここが持っている)は現状のままのようですが、ブエナビスタは7/1付でウォルトディズニースタジオモーションピクチャーズジャパンと社名変更。一方インディペンデント系の配給会社もここしばらく激震が続いています。日本ヘラルドは昨年角川映画(株)となり、東宝東和がユニバーサルを担当と・・・。このめまぐるしい変化は驚きです。
 実は興行に関しても再編が進んでおり、このあたりは映画館とも密接な関係があるのですが、そのあたりはおいおい。

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2007年8月11日 (土)

『リトル・チルドレン』

20070813234853☆☆1/2 視点の面白さをいかしきれない。
 トッド・フィールド(『アイズ・ワイド・シャット』のニックだよー、どこかでみた人だと思ったら。この人、俳優出身だったのね)の監督2作目は、現状への不安感を抱いた郊外の住宅地の住民たちをみつめたドラマです。この手の作品としては『アメリカン・ビューティー』などがあげられると思いますが、この作品はあれほどあからさまにシニカルではなく、かといって重厚さがあるわけではありません。ディテールの描き込み方も中途半端な印象で、エピソードの整理が足りない分、不要に長くなったと言えます。またキャラクターの描き方のバランスが悪く、主人公2人の造型はあまりにもつまらないと思います。パトリック・ウィルソンもケイト・ウィンスレットも役をつかみ損ねている印象です。一方でその周囲にいるロニーとその母、そしてラリーの描き方は冴え渡っており、中でもロニー演じるジャッキー・アール・ヘイリーの演技は鮮烈な印象を残します。
 視点の面白さはありますが、それをいかしきれていない作品でした。
(ル・シネマ1にて)

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2007年8月10日 (金)

「夕凪の街 桜の国」

Yuunagi原作のコミックを紹介するために一昨年書いた文章を転載します。

 読み終えたときには、その物語を受け止めて、私はただ息を大きくはくことしかできなかった。しかししばらくしてその物語に思いをめぐらせたときに胸がくっとあつくなった。そしてもう一度読み返したときには、ただ涙するしかなかった。同じく広島を背景にしたマンガ『はだしのゲン』が怒りと叫びでつづられているとすれば、祈りと希望でつづられた物語、それがこの『夕凪の街 桜の国』だと感じた。
 この物語は3部構成になっている。そして3つの物語の表情は大きく違う。それが大きな魅力になっている。
 最初の物語は、ただ言葉を失うしかない絶望の物語。声高でない分、余計に心にしみるし、何気ない言葉が私たちの胸をえぐる。ただこの物語が広島を背景にしている以上、ある程度読者として想定していた部分であったことも事実だ(それでも見事な描写であることにちがいはないが)。しかしこの作品が凡百のものと一線を画すのは最後である。ここで作者は彼女の死の後に残された人々がいることを明確に提示する。さらに作者は2つめの話から物語に登場する女の子の母親の幼い日に、1話で死ぬ女性との楽しい日々を示すひとコマを入れている。本編の終わった後に描かれたであろう、このつなぎのカットが後で作品の方向性に重要な意味を持ってくる。
  2話は少女の思い出の物語だ。ひとコマひとコマが美しい。そしてひとコマひとコマが切ない。しかし一見すると『スタンド・バイ・ミー』的なノスタルジーでくくられるこの部分には、ぬぐいきれない死の影がつきまとう。少女がカギを開けて家に入るとき、少女が病院をたずねる時、少女が野球をする時。それは母の死であり、被爆によるものかもしれない弟の病気であり、父からの影響である。そしてひとつひとつを考えるときに、我が身に突然ふりかかってくるかもしれない死に対する反動であるがゆえに生への強烈なあこがれが伝わってくる。
 そして第3話で物語は穏やかに物語を終える。そこにあるのは日常へのいとおしさであり、大切な人を愛する気持ちである。「そして確かにこの2人を選んでうまれてこようと決めたのだ」という台詞が、あざやかな桜の舞う町並みの美しさとともに、私の胸に深く刻まれた。時の流れをわずかなページでおさめてしまう鮮やかさは、すでに多くの作品で試みられているが、語りすぎないこの物語の見事さは、後で読み返したとき、そうあの1話と2話のつなぎのカットのように、読者に新しい発見をもたらしてくれる。
 漫画という表現は絵と言葉で物語を紡ぎ出している。この漫画の素晴らしさは多くの芸術に共通する部分と、漫画ならではの部分がある。まず偉大な文学がそうであるように行間を読みとるだけの深みが存在することだ。読者の想像力を大いに刺激し、ひとコマひとコマの向こう側を読みとることは何と魅力的なのだろう。また漫画ならではの部分として本と同じように自分のペースでめくりながら、文学とは異なり一枚の絵で文章1ページ分の表現をしてしまう点である。この物語は私たちにゆったりとかみしめて読むことを求めている。そしてそれがぴたっとはまるころに、私たちの目の前に桜の舞う町並みがひろがるのだ。あの桜の舞う町並みに私たちが涙してしまうのは、その絵の美しさにであり、その絵のあたたかさにであり、この絵とこの言葉でしか成立しなかった物語になのだと感じる。こればかりは文章ではどう逆立ちしても表現できないし、映像でも難しいことだろう。

※映画版レビューはこちら

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2007年8月 9日 (木)

『パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド』

20070812171726☆ もうこりごり。
 みる前から全然乗り気ではありませんでした。見終わったら疲れ果てました。1、2 →review 、3とどんどんつまらなくなってきています。アトラクションだって10分前後で終わります。延々と行き当たりばったりの話を激しい動きの映像とセットでBGMも途切れることなく3時間近くもつきあわせるのは拷問に近いです。そもそも話の辻褄すら合わそうとする気持ちがあるのというぐらい、裏切りの連続。ウラのウラはオモテって知ってます?(笑) 昔の香港映画よりひどいレベル。とりあえず2&3と同時撮影する方法はやめませんか? 間延びばかりで成功した試しがないでしょう。唯一楽しめたのはキース・リチャーズの出番だなんて、なんじゃそりゃ。
 まあめでたいのはこれで一応完結らしいこと。もうこりごりです。
(WMC港北ニュータウン7にて)

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『河童のクゥと夏休み』

20070812171734☆☆1/2 解き放たれた縛りが変える難しさ。
 あの原恵一監督の5年ぶりの新作です。もうそれだけで胸がわくわくでした。なかなか上映時間が合わないで困りましたが、ようやくみました。原監督はご存じの通りシンエイ動画の社員として『エスパー魔美』、そして『クレヨンしんちゃん』シリーズの劇場版が長編作品としてフィルモグラフィを積み重ねた人です。私が一番注目していたのはここでした。つまり物語やキャラクターの世界観のしばりがなくなった時に、はたして作風はどうなるのか?という点です。
 さすがに原監督。正攻法できちっと物語を語ります。クゥちゃんとの交流を中心にした描写は丁寧で、いかにも監督らしいです。ただクゥの存在が周囲に大きく影響を及ぼすのはわかりますが、いくら何でも欲張りすぎ。もっと削ぎ落とすべきだったでしょう。これだけ詰め込むと138分の長尺もうなずけます。本来はクゥではじまりクゥで終わる物語である以上、クゥの眼からみた世界にきちんと絞るべきだった。康一の学校での物語は余計でした。さらにあまりにも誠実ゆえに息苦しさがあったのも事実で、しんちゃんのギャグがいかにありがたかったかがわかります。これを言ってしまうと元も子もないのですが、この作品しんちゃんシリーズの枠内でやったら大傑作だったかもしれません。つまり何が言いたいのかというと、あえてしばりを作る必要はないと思うのですが、自分のフィールドをどう構築していくかというのはクリエイターの大きなテーマのはずです。今回はそういう意味で原監督の本当の処女作といえたのかもしれません。
 力作です。一見の価値があります。しかしややご祝儀込みかもしれません。次、5年後はなしですよ。せめて3年ぐらいのサイクルでお願いします。
(MOVIX本牧3にて)

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2007年8月 8日 (水)

『夕凪の街 桜の国』

20070812171738☆☆ 映画はマンガに負けた。
 こうの史代さんの原作はさまざまなところで高い評価を受けました。かくいう私も「映画秘宝」で紹介された時に読み、そのすばらしさに胸うたれました。たまたま紹介する必要があってかいた原作のレビューは後日アップするとして。そんな大好きな原作がどう料理されるかという期待もありましたが、不安もありました。それは監督が佐々部清さんだということ。『半落ち』などで知られるこの人、一見その誠実な作風はピッタリなように思う方もいるかと思いますが、私はそう思いませんでした。で、結果的に私の不安は的中します。この作品、残念ながら志は高いものの表現として成功していない作品になりました、
 大きなポイントは2つありました。まず前述した佐々部監督の演出スタイル。私は彼の浪花節は嫌いではありませんし、はまる作品(たとえば『半落ち』)もあるでしょう。浪花節はある程度の型と予定調和が必要になってきます。ゆえに佐々部監督の演出スタイルが結果的にうみだす「わかりやすさ」は安っぽさにつながった気がします。悲しい場面に悲しさをわかりやすくするかのようなBGM。正攻法と古臭くてセンスがない事は同義ではありません(プリプリの『ダイヤモンド』であんな切り返しのカットバックが出てくるとは!)。さらに回想、ボイスオーバーの使い方の陳腐さが原爆という出来事が人々に与えた心の傷の重さにつながってきません。原爆投下後を死屍累々の映像で表現するつもりは佐々部監督にはなかったそうですが、だったらそうしなくてもわかる表現(絵じゃだめです)にしなくてはいけません。この作品は浪花節になってはいけないタイプ(たとえば監督でいえば現役でいけばこういう状況を喜劇にしてしまう森崎東、冷徹に突き放す事ができる柳町光男とかどうですか?)ゆえに、演出スタイルがかみ合わなかったといえます。ついでにいえば彼の演出スタイルに応えられるのはそれ相応の技量のいる演じ手が必要です)。
 もうひとつは前半のパート「夕凪の街」の主人公、七海のキャラクターの描き方が違ったこと。私は原作を読む限り、とても快活で現代的な女性という印象を受けました。同僚の男性とのやりとりも微笑ましさすら感じるやりとりです。ところがみるからに薄幸そうな麻生久美子、ただただ好青年な吉沢悠というキャスティングになった結果、お涙頂戴の雰囲気を漂わせてしまい、さらに田中麗奈演じる「桜の国」と乖離した印象を与えてしまいました。実はこのマンガが素晴らしいのは家族の絆をきちんととらえ、その中で生きていくということをあたたかくみつめているところにあります。つまり「夕凪の街」で失われた命が次の世代が受け止めているところに時間と歴史の重みがありつつも、前向きで力強いあたたかさがあったわけです。しかし映画は残念ながらそこまで表現できていません。
 しかしながらそれでも麻生久美子さんの存在感は素晴らしく、また柔らかくも心の底にぐっと哀しみを押し込めた母役の藤村志保さんもさすがです。堺正章さんは及第点。それ以外(特に若手)はみーんなバツ。表現の引き出しの少なさ、想像力の欠如を反省すべきです。
 戦争にきちんと向き合う映画人の心意気は大いに評価しますが、この作品の表現力はマンガに負けました。
(109シネマズ川崎3にて)

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『トランスフォーマー』

20070812171732☆☆1/2 巨大ロボットが動くだけで感動的。
 今年の夏一番楽しみだった作品です。あの予告編は男ならきっと燃えるでしょう! ですからまずあんな大きなロボットが自由自在に動くということが感動的でした。主人公の目の前に愛車から変形したロボットが現れる場面などは、それだけでウルウルしてしまいそうでした。ILMひっさびさの本領発揮。デジタルとプラクティカルの組み合わせは見事です。今年はオスカー視覚効果賞いけるんじゃないでしょうか。
 ただし活劇の作り方としては問題ありです。マイケル・ベイは大嫌いというわけではないのですが(『ザ・ロック』はよくできていたよねぇ)、今回はシークエンスの作り方があまりにも細切れ。私に「演出見本市」と揶揄された『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』でのスピルバーグはまるでアトラクションのプロモーションか、デジタルエフェクツのサンプルかという内容を、彼の演出力で少なくともきっちりとみせました。マイケル・ベイ自身も『ザ・ロック』『アルマゲドン』ではストーリーをアクションでみせるという力をみせました。しかし今回は魅せるシーンが短すぎて欲求不満です。さらにあまりの長尺でロボットが暴れはじめるのが遅すぎ。単純なロボットアクションでも観客は全然問題なかったと思います。だってこの作品ではロボットを見に来ているのですから。相変わらずジョン・ボイトやジョン・タトゥーロなどの個性派演技陣を無駄遣いしているのもご愛敬。
 すでに続編の話も出てきているそうですが、いや、この際ですからもっと日本の他の作品をやってみませんか? 『マジンガーZ』『ボルテスV』、いや「スーパーロボット大戦」なんてどうでしょう? とりあえず男性諸君は必見です。
(109シネマズ川崎7にて)

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2007年8月 7日 (火)

『オズの魔法使』

Dvoz☆☆☆ かなりひねってある。
 これまたようやくという感じで。これがまず1939年製作ということにも驚きですが、さらにここまでレストアされてHD映像で楽しめるというのもありがたいかぎりです。さらに内容の方もかなりアバンギャルドで、そういえば私はこれの続編にあたる『オズ』(1985)をみているのですが、なんかこっちのグログログチャグチャ感はあながち的はずれではなかったのだと思いました。特にプロダクションデザインは個性的、3人(?)組を変身させた特殊メーキャップのパイオニアの1人、ジョージ・ボウのテクニックも素晴らしく、これは一度みたら強烈な印象を残すはずです。少なくともファミリー向けの単純な話ではなく世界観もかなりひねってあるところが、ずっと愛されてきた理由なのでしょう。ただジュディ・がーランドには全然魅力を感じませんでした。

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2007年8月 6日 (月)

訃報:ミケランジェロ・アントニオーニ

 映画監督、ミケランジェロ・アントニオーニ氏が30日夜、自宅で亡くなりました。享年94歳。死因は明らかになっていないません。
 1912年、イタリア北部フェラーラ生まれ。学生時代からイタリアの地方紙に映画批評を寄稿し、1939年に映画雑誌“チネマ”の編集部員となります。ボローニャ大卒業後、ロッセリーニやビスコンティといった監督の下でシナリオを執筆。1950年、38歳の時に『愛と殺意』で監督デビューした。以降、『女ともだち』(1956)でベネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞したのをはじめ、『情事』(1960)とアラン・ドロン主演作『太陽はひとりぼっち』(1962)でカンヌ国際映画祭審査員特別賞を受賞。『夜』(1961)でベルリン国際映画祭金熊賞、『赤い砂漠』(1964)で再びベネチアの金獅子賞、『欲望』(1967)でカンヌの最高賞パルムドールと、3大映画祭すべてで最高賞を受賞しています。現代人の孤独や絶望、愛の不毛を描く一連の作風で、仏映画監督ジャン・リュック・ゴダールらのヌーベルバーグに強い影響を与えました。1985年に脳梗塞を患い体が部分的に麻痺しますが復帰。80歳を超えても『愛のめぐりあい』(95年)を手掛け、95年度米アカデミー賞の名誉賞を受賞しました。遺作はオムニバス作品『愛の神、エロス』(2004)。
 恥ずかしながら私、この人の作品を1本もみていません。ベルイマンに続き、ヨーロッパ映画の巨匠がなくなったことにも衝撃ですが、日本でのニュースの小ささにも衝撃です。ご冥福をお祈りします。

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2007年8月 5日 (日)

訃報:イングマール・ベルイマン

 映画監督イングマール・ベルイマン氏が30日、スウェーデンのフォーレ島の自宅で亡くなりました。享年89歳。死因は明らかになってません。
 1918年、スウェーデンのウプサラ生まれ。1946年に『危機』で映画監督としてデビュー。以後『夏の夜は三たび微笑む』(1956)、ベルリン映画祭金熊賞を受賞した『野いちご』(1957)。『第七の封印』(1957)、『処女の泉』(1960)、『ファニーとアレクサンデル』(1982)、ちなみに監督作がアカデミー賞外国語映画賞を3度受賞しているのはフェリーニの4度に次ぐ記録です。2003年の『サラバンド』が遺作となった。1976年にスウェーデン税務当局から告訴されたベイルマンは、その後ドイツへと移り、ミュンヘン・レジデンツ・シアターの演出家を務めたが、6年間の亡命を経てスウェーデンへ戻り、残りの生涯を過ごした。また同監督は公には引退したことになっていますが、TVドラマの監督や映画の脚本などを執筆していました。
 作品には愛、孤独、苦悩、神との繋がりがテーマとして描かれるので非常に難解な作風で知られ、私自身も彼の作品は『秋のソナタ』しかみていません。でもこの作品、みたのは中学生だったと思うのですが、イングリッド・バーグマン(これが遺作)とリブ・ウルマンの2人に圧倒されたことをはっきりと覚えています。ご冥福をお祈りします。

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2007年8月 4日 (土)

『マーダーボール』

20070813120108☆☆☆ みてよかった。
 昨年日本でも公開されて話題となったウィルチェアラグビーの選手たちを追ったドキュメンタリーです。知らない世界の扉を開けてくれるドキュメンタリー作品の力を再認識しました。まずオープニングでこれがMTVピクチャーが出資した作品だと言うことを知り驚きました。こういう作品に出資するMTVも凄いですね。それでこの作品のスタイルが少し読めました。カッコイイ。もう少し言うならば若い人も共感できるようなセンスとスタイルがあります。車いすを利用する人をこれほどスタイリッシュに撮影した作品も珍しいですね。日本ではあまりスタイルのあるドキュメントが評価されない傾向にありますが、でもこういうスタイルも私はありだと思います。競技自体も対象となる人々も個性的でおもしろく、またドキュメンタリーの追いかけ方も単純なお涙頂戴にはならない爽やかさがあって好感が持てました。ただこれはモーガン・スパーロック(『スーパーサイズ・ミー』)の一連の作品もそうなのですが、カッコヨサの中にあるドロクササへあと一歩の踏み込みがありません。ここはもったいないと思いました。
 こういう映像は作品の完成度うんぬんもそうですが、みてよかったと思える作品でした。

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2007年8月 3日 (金)

米興行で2本の記録的オープニング

 今夏の日本の興収ランキングは先行き不透明な所があって、頭一歩抜け出すほどのパワーがある作品がある感じではないのですが、それは米国でも同様で、新記録更新が期待されたシリーズ3作目3本がはやばやに息切れしました。そんな中で注目すべきは2本の作品。まずひとつめは日本でも秋公開のシリーズ3作目『ボーン・アルティメイタム』。レビューもよく8月公開作品としては歴代最高となるオープニング成績を記録しました。2本目はついに映画化された人気TVアニメ『ザ・シンプソンズ』。これまた続編でないアニメ作品としては記録的なオープニングとなりました。で、注目の日本公開ですが、来春以降とのこと。
 この2作の国内での興行を占うとなると、はやくも宣伝担当が悩んでいる顔が目に浮かびます。ちなみに前者の場合、『ボーン・アイデンティティー』は16億。『ボーン・スプレマシー』は12億。さあ、どうする東宝東和さん?(ちなみにこの秋から米ユニバーサル作品の東宝東和への業務委託が始まる。本作が2本目で目玉中の目玉)

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2007年8月 2日 (木)

『アメリ』

Dameri☆☆☆ 監督の個性がわかりやすく出た。
 ようやくみました。ジャン・ピエール・ジュネの個性がわかりやすい方向に出たと思います。うまいなあと思うのはこういう人いる!とフランス人に思わせた所であり、こういう感覚はローカルなれど、インターナショナルなセンスにつながるというところ。オドレイ・トトゥは魅力的。マシュー・カソビッツもとても自作からは想像もつかない好感度の高さです。ただかなり危ういバランスの上に成立しているともいえ、一歩間違うとというところがたくさんあります。少なくともジュネがおしゃれな方向でまとめようとしたというよりも、この素材を表現する手段として選択しただけだと思いますので、必ずしも次が同じだとはならないので、この監督の名前を覚えちゃった人、ご注意を(汗)。

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2007年8月 1日 (水)

誤記だらけ?

 何気なく昨日の黒澤DVD情報の確認をするために、いろいろとうろうろしていたらみつけたのがここのこれ

誤記だらけじゃん!

 まあでもパンフレットの誤植なんぞそんなに珍しいことではありません。前も書きましたが『SF新世紀レンズマン』ではアルフィーの紹介で50枚を超える大ヒットなんていうのがありましたし、音響の表記なんて誤記だらけですよ(この間なんてドルビーSDRなんてあったし)。でもこれ、数としてはひどすぎるかもしれません。ただ内容はかなり細かい感じもします。おかしかったのがロッキーって前回もDVDのジャケットで似たことがありました。このあたりはファンじゃないと気づかないってことも多いのでしょう。きっとすごく熱心なファンがみつけているのかもしれません。でも疑問も。

・チェック体制はどうなってるんだろう?
実は表に出ていないケースもあるのではないだろうか?(私が知っている表に出てきたケースはこれ
・交換する人はどのくらいいるんだろう?
私、はっきり言ってめんどくさいです。というか修正版出したんでしょうか? だって作っているんだったらいつ作ったのかがポイントですよね。えっ、6月初旬? ロードショー終わってるやん・・・。

そう思っていたらこんなのも。はあ。

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