『コレクター』(1965)
☆☆☆ かみ合わない不毛な2人のやりとり。
ウィリアム・ワイラーのサスペンススリラーをようやく。サイコスリラーというジャンルがいつ確立されたかというところはさまざまな議論があると思いますが、犯罪者側の歪んだ心理を描いたという意味では、この作品も禁じられた水先案内人になったというところでしょうか。
もともとは舞台劇だったそうですが、やりかたを間違えると下品でつっこみどろの満載になるところを濃密な空間として描くワイラーの力はさすがです。2人のやりとりの不毛な様子に絶望的な恐ろしさを感じさせているからこそ最後のオチが効果的になります。このカッティングや技巧に走らない正攻法なスタイルは、ここ最近のスリラーにもお手本にしてもらいたい所です。
そしてやはりテレンス・スタンプにつきます。リアルタイムでみている彼の出演作は、はっきりいってどうでもいい作品のどうでもいい役どころが多く、何がそんなにいいんだろうと思っていたのですが(ただし『イギリスから来た男』はのぞく。これはクールです)、なるほどこの当時のスタンプはものすごいカリスマを持っていたのがわかります。(『サイコ』のアンソニー・パーキンスもそうでしたが、こういう役どころがきちんとできる役者さん、この後はある意味つらいでしょうね) それに対してサマンサ・エッガーの方は、女性として、そして役者としての魅力を感じず、明らかにスタンプに負けていました。
何度もみたくなるタイプの作品ではありませんが、一見の価値は充分にある古典です。
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