訃報:熊井啓
『帝銀事件・死刑囚』『海と毒薬』『日本の黒い夏/冤罪』など幅広く社会的なテーマを扱ってきた日本を代表する社会派の巨匠、熊井啓監督が5/23、クモ膜下出血のために亡くなりました。76歳でした。
長野県生まれで、新制の信州大学を卒業後、独立プロダクションの助監督を経て、日活撮影所監督部に入社。助監督時代は『五番町夕霧楼』などで知られる田坂具隆監督に師事。監督デビューは64年の『帝銀事件・死刑囚』。その後も『黒部の太陽』(1968)、『天平の甍』(1980)などの作品を残しました。『サンダカン八番娼館/望郷』(1974)と『海と毒薬』ではベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞し、2001年に功労賞も受賞しています。亡くなる直前まで、渡辺謙を主役にした20作目となる企画に取り組んでいたというが、黒澤明監督の遺稿の映画化『海はみていた』(02)が遺作になりました。
正直かなり堅苦しい作品が多く(題材的にはキライではないのですが)、あまり好きな作品はないのですが、『天平の甍』を最初にみた時のあの感動は忘れません。唐招提寺で思いにふける普照の姿は、熊井啓の重厚さがあってこそ成立した場面でした。ご冥福をお祈りします。
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