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2007年5月21日 (月)

『エンジェルス・イン・アメリカ』自分の中での2つのツボ

 2つポイントがありました。
 ひとつめはローゼンバーグ夫妻が登場していた事に不覚にも気がつかなかった事。開巻間もなくアル・パチーノ演じる弁護士ロイ・コーンのオフィスに、この事件を伝える新聞記事が掲示されていたのです。そしてやがてエイズに侵されていくロイの幻覚に、エセル・ローゼンバーグ(メリル・ストリープ)が現れるようになります。このローゼンバーグ事件は1950年に原子爆弾製造に関するスパイ容疑をかけられた夫婦が死刑にいたるのですが、当時共産主義の脅威が言われはじめた時代故に、センセーショナルにとりあげられ、アメリカ近現代史の中では有名な事件のひとつです。またマッカーシズムで多くの人々がいわれなき罪で苦しんだように、このローゼンバーグ夫妻も本当に有罪だったのかはいまだに議論がわかれている事件でもあります。またこのローゼンバーグ事件は小説などでモチーフとしてとりあげられることもしばしばで、その中でももっとも有名なのはエドガー・ドクトロウの小説「ダニエル書」でしょう。ミロシュ・フォアマンの映画でも知られる「ラグタイム」の原作でも知られるドクトロウのこの小説は、ローゼンバーグ事件をモデルにして、残された2人の子どもを描いた名作です。で、この小説を知るきっかけはやはり映画で、実はこの小説も1983年に映画化されています。監督はなんとあの名匠シドニー・ルメットで、『評決』の後に作った作品です。しかし物語の難しさゆえにか、日本では劇場未公開。未だにDVDはおろかソフト化も日本ではされていません。何しろ私にとって映画好きの入り口で、面白さを存分に教えてくれた1人ですから、気になって気になって仕方がありません。やがて大人になって米国盤のVHSを入手しましたが、あまりの画質の悪さに耐えられずに、そのまま眠ったままになっています。いわば幻の1本です。
 ふたつめは実はそのロイ・コーンなる弁護士も実在の人物であった事を知らなかった事。赤狩りで黒幕と呼ばれた1人だったそうで、ローゼンバーグ夫妻を有罪にするにあたって、大きな影響力を持った人物でした。また当時共産主義者だけでなく同性愛者も攻撃したコーンですが、彼自身、男性との性交渉によって、後にAIDSにかかり、肝臓ガンと言い張ったというエピソードも実話だそうです。
 というわけでこの2つのポイントで、1950年代のような古き良きアメリカの価値観では生きていけない時代をどう現代人は生きていくのかというこの作品の視点を私ははっきりと持つ事ができました。映画の楽しみの1つに、ひとつの作品から新しい世界への扉になるということがあります。私が人よりはそういう面で好奇心旺盛になり、それなりの素養を身につけられた(といってもまだまだですが)のも映画のおかげです。
 もう1回だけ続きます!

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