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2007年5月 3日 (木)

『バベル』

20070504143514☆☆ 3度目は効かなかった話法。
 菊池凛子のノミネーションに関係なくイニャリトゥ監督の新作として期待していたのですが、これは出来としては前作『21グラム』には遠く及ばないものになりました。
 この監督(というか脚本家も含め)の独特の語り口、つまり時制を並べ替え、複数でおきた出来事を並行して進める話法は、昨今ではそれほど珍しいものではありません。しかし『21グラム』では「主観」の差違で物語がほつれる面白さを示していましたが、今回のようにディスコミュニケーションをモチーフにするのであれば、絶対に話の規模を大きくしてはいけなかったはずです。それはくしくも監督が取材に対して発言しているように、本当の孤独は、大勢の中で自分が1人だと感じる瞬間であって、それが話を同時進行させる話法によって引き出される可能性はきわめて少ないように思うからです。事実日本を舞台にしたエピソードは面白いのですが、話のきっかけとなるモロッコや、メキシコの話はステレオタイプな描写に終始します。
 とりあえず同じ監督が3作ともおなじ話法を採用したわけですが、正直またかと思った部分があります。はたして次はどうするのか、いろいろな点で興味があります。
(日比谷スカラ座にて)

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