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2007年5月 3日 (木)

『パフューム ある人殺しの物語』

20070504143518☆☆☆1/2 毒を持った一級品。
 素晴らしかった! はっきりいって観客を選ぶ作品ですが、見事な出来映えであることには違いない作品です。
 一歩間違えるとただ下品なだけの作品になると思うのですが、背徳の美しさをきちんと表現している事が最大のポイントでしょう。そもそも芸術というものが主観的なところが多分にあって、それは人からみると滑稽であったり理解できない部分であったりします。そんな自分が美しいと思う物への思い入れには危うい部分があることをきちんと映像で表現しているところが見事です。また寓話としての側面も兼ね備えたところがこの作品の格を上げました。それはあのクライマックス。<以下ネタバレ(ドラッグ&反転でお読みください)>あの広場でおきた出来事の中で、彼自身のフラッシュバックの中になぜ最初の被害者が出てきたのか。そしてあの中でのみ、なぜ自分の性行動の映像が出てきたのか。人を愛し愛されるという事は自分がアイデンティティを持つ事に大きく関係するという点をはっきりさせた(究極の香水を自分が作り出しても、自分の想いが決してみたされることがなかった)ことで、ラストシーンで自らが食べられるというホラーまがいのショッキングなシーンも滑稽な中にも寂しさが漂う名場面になったといえます。
 ダスティン・ホフマンがその特徴的な鼻をいかして作品にアクセントを与え、アラン・リックマンは天才に振り回される常識人をいつもながらの渋い演技で見事な存在感を示します。この2人がいるといないとでは作品の香りは大きく違ったと思います。ナレーションはすっかり板についた(?)ジョン・ハート。『ドッグヴィル』でも見事でしたが、ここでも語り部としていい仕事をしています。
 こういう毒を持った一級品に出会えることはなかなかありません。そういう意味で私たちはその毒を食らいつつも、そこにしかない美しさを味わえることに感謝したくなる作品です。
(銀座シネパトス2にて)

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