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2007年3月29日 (木)

『カミュなんて知らない』

B000ha4☆☆☆ 知的な好奇心を駆り立てられる。
 10年ぶりになる柳町光男の新作は、監督自身が大学で担当しているワークショップでの経験に大きな刺激を受けて本作ができあがったそうですが、なるほど、昨今の凡百の映画とさえ呼べぬ邦画群の中でも、異質な光を放っている力作でした。
 おもしろかったのが、実際に起きた殺人事件をベースに起きながらも、そこにカミュの「異邦人」を重ね合わせて、さらに作品に映画ファンならニヤリとしてしまうトリビアなネタをちりばめただけでなく、映画自体の構造も『アデルの恋の物語』や『ベニスに死す』などもスパイスにして物語を組み立ててしまったところ。輝いていた頃のピーター・グリーナウェイを思い起こしました。かつて重苦しい題材をガチッと作る作風で知られていた柳町監督だっただけに驚きでした。そこにかつての柳町流の大学生の描写が加わり、そこがかえって生々しく感じられました。残念なのが今の柳町監督に応えられる力を持った役者陣がいないこと。素晴らしい存在感をみせる中泉英雄の他は、かろうじて及第点ラインでしょうか。
 邦画には珍しく知的な好奇心を駆り立てられる、もっともっと評価されてよい作品です。

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