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2007年1月 4日 (木)

『ブラック・ダリア』

20070116000240 ☆☆1/2 これではデパルマでなくとも。
 デパルマ期待の新作はあのジェームズ・エルロイ原作。撮影がビルモス・シグモントときたら、そりゃ傑作『ミッドナイト・クロス』のような絢爛たる映像テクニックでいっぱいの、めくるめくフィルム絵巻のような世界を期待しようかというもの。しかしノワールにはなっていたものの、どこか人工的で妙にこぢんまりとした作品になっていました。彼の作品の中でそのバランスがもっともよかったのは『カリートの道』だと思うのですが、この作品では物語に縛られすぎたのかもしれません。これならばやはりカーティス・ハンソンのような職人がやるべきだったか、ひょっとしたらタランティーノのようにギラギラとしたストーリーテリングもありだったかなと思います。
 デパルマは映像で語られることが多いのですが、実は彼のすごさは役者陣から巧みに演技を引き出すことにあると思います。『キャリー』が一線を画しているのはその秀逸な演技陣にあり、『ミッドナイト・クロス』『カジュアリティーズ』を私が好きなのはキャストの新たなる側面を演技で楽しめたからです。そういう意味で問題点が2つ。まずキャスティングとしてはヒラリー・スワンクが弱い。どうしてもファム・ファタールにはみえない。ここがスカーレット・ヨハンソンと対にならないとジョシュ・ハートネットの右往左往が生きてこない。それからそのハートネットも力量不足です。デパルマの作品がよれよれになる時は出演者のよい部分を出すことができなず、途中放棄のように不揃いの演技が並んだ場合です。そういう意味ではこれもそういう感じがしました。期待したシグモンドの撮影も往年の独創性はなく、ビル・パンコウの編集技も切れ味不足。唯一さすがだったのはマーク・アイシャムのスコア。これは花マルでした。
 この手の作品をこういう方向性で演出するのであれば代わりはたくさんいると思います。さすがに『殺しのドレス』のようなテクニックのみの作品は難しいかもしれませんが、『カリートの道』のような成熟した作品を私は楽しみにしているのです。その点からやや期待はずれな出来映えだと感じました。
(新文芸坐にて)

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