『父親たちの星条旗』
☆☆☆ 心にずっとひっかかる作品。
イーストウッドの戦争映画というと『ハートブレイクリッジ』があります。この作品はありきたりな落ちこぼれ小隊特訓ものでありながら、イーストウッドらしい一筋縄ではいかない佳作で、政治的な方向性を超越した人間くさい描写が印象的でした。それから20年、劇的な興奮はきわめて少ない映画ですが、イーストウッドが遙かに高いレベルに到達したことを如実に示す力作となっていました。
ひとつひとつのエピソードにドラマがあり、それを何層にも積み重ねた物語はさすがポール・ハギスのシナリオですが、そこに下手な解釈を加えず、イーストウッドはただ観客に提示していきます。それによって観客は提示されない部分に思いをはせるのです。硫黄島の星条旗をめぐるエピソードは、すでにアメリカでは語り尽くされた有名な話ですが、それをあえて今というフィルターでみつめなおした意味もそこから浮かび上がってくるのです。
実はみるのが少し怖かった作品です。イーストウッドだから悪い作品ではないだろう。しかし昨年『ミリオンダラー・ベイビー』は秀作だったものの、未だに再見するのがためらわれるほどのずしりと重く心にのしかかってくる作品でした。作品はやはり重い内容でした。しかし私たち観客の心にずっとひっかかる見逃してはいけない作品でした。
(109シネマズMM横浜6にて)
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