『絞殺魔』
☆☆1/2 犯人を断定的にみせない個性。
柳下毅一郎氏をはじめとしてさまざまなところで絶賛されていたので、気になっていた1本がWOWOWでオンエアされました。しかもこれ、まだ日本ではソフト化されていないのです。実際にあった連続殺人事件をベースにしたこの実録ドラマは、なるほど凡百のドラマとは違う異様な緊張感に満ちていました。
この映画がユニークな点として、殺害にいたるまでのプロセスを観客にみせる時に犯人を断定するような描き方をせず、スプリット・スクリーンを使って、観客に提示するかのようにみせていることがあげられます。これによって現実には解決していないこの事件の重要なカギを握る容疑者が描かれる後半、はたして彼が本当に真犯人であるかを観客に考えさせる構造になっています。トニー・カーティス演じる容疑者の描き方も独創的で、普段は明るい役柄の多い彼をキャスティングした時点で成功していると言えるでしょう。反面そちらを支えるために犠牲になったのは警察側の描き方で、実際の捜査状況がそうであったのかもしれませんが、あまりにも右往左往している様子が緊張感をぶちこわしています。
傑作ではないと思いますが、一見の価値はある力作です。
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