『レディ・イン・ザ・ウォーター』
☆☆ やりたいことはわかる。窮屈で底の浅い表現。
賛否?まではいかないものの容認派と否定派に真っ二つに分かれていて、久しぶりに批評の存在意義がある作品ですね。私はこの映画、つまらなかったです。でも意欲作であり、シャマランという男の作品は見続ける価値があることは是非述べておきたいと思います。
やろうとしていることはすごくわかるのです。私は『アンブレイカブル』が好きな人だし(笑)。けれども結局ここには物語をわくわくしながら読み進める楽しさがないのです。シャマランで一番面白かったのは『アンブレイカブル』、まあまあが『ヴィレッジ』『シックス・センス』、ダメが『サイン』だったのですが、この作品がもっとも似ているのは『アンブレイカブル』ですね。これの同工異曲とはよくいったもので、あっちはアメコミ、こっちはおとぎ話。あの映画と同じように登場人物たちには実は役割が(しかもそのジャンルではスタンダードな)与えられていて、それが終結へのカタルシスになっていく物語構造です。ところがあの映画にあった想像力を刺激する面白さがここにはありません。今ここで語られる物語に行間を読む楽しさがあった。ところがこの作品ではひとつの解釈しか許されず、非常に窮屈な印象で物語の底が浅い。結局それがリアリティの欠如につながり、安直なご都合主義ではという誤解を与えています。そういう意味ではシャマランはストーリーテラーではないのかもしれません。はやりたいことがわかるだけに惜しいと思います。撮影がクリストファー・ドイルになったのも大きなマイナス。彼はシャマランの映像世界がわかっていません。タク・フジモトやロジャー・ディーキンズが記号論的な面白さを提供したのに比べると力量不足です。ただいつもながら役者陣からは楽しくて見応えのある演技を引き出していますね。それに応えているポール・ジアマッティは見事です。『猿の惑星』ではイヤミな演技をする人だなあと思っていたのですが、いつの間にこんなに味のある役者さんになったのでしょう。
一度彼は他の人のシナリオを映画にした方がいいかもしれません。(カメオ出演もやめるべき。あれもイヤミです。) 批評家に神経を使ってイヤミな要素を入れるくらいならば、私たち映画ファンを今一度心躍らせる物語を紡ぎ出してもらいたいと思います。
(109シネマズMM横浜3にて)
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