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2006年8月17日 (木)

『怒りの葡萄』

07tfb5☆☆☆1/2 精緻な白黒画像に浮かび上がる人間の苦悩。
 前回は中学生の時に火災前のフィルムセンターのジョン・フォード特集ででした。しかも字幕スーパーなしだったんです(シノプシスだけはフォード特集の解説にあったのでおおまかな筋はわかりました)。でも鮮烈な印象がありました。今回ハイビジョンでみなおして、さらに強烈な印象が残りました。これはすごい、名作です。
 まず撮影。これほどお見事なモノクロ撮影にはそうそうお目にかかれないでしょう。美しいだけの撮影はたくさんあります。中には物語の邪魔までするぐらい主張の強い場合もあります。しかしこの作品は美しいだけでない、映像が物語を強固に支えているのです。スタンダードサイズでモノクロームなのに、空気や埃までが感じられる見事さ。そして暗闇に浮かび上がる登場人物の表情。本当に素晴らしい。そんな過酷な環境の中で生きていく家族の姿は胸えぐられるものがあります。フォードの演出にはうならされます。リアリズムの中から生み出される叙情性は彼の真骨頂でしょう。そして役者陣がまた素晴らしい。ヘンリー・フォンダはもちろんのこと、ジョン・キャラダインやジェーン・ダーウェルらがまた登場人物そのものとしか思えない見事な演技をみせます。
 今とは社会状況に違いもあり、受け止め方が大きく変わっているところもありますが、それでも富める者の陰で泣いている人たちがいるという状況の中で、家族がいきていく姿を普遍的に描いたこの物語は永遠の輝きを放っているのです。 

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