『リンダ リンダ リンダ』
☆☆☆1/2 青春の輝きに圧倒的な説得力がある。
よかった! とてもよかった! これはとてもよくできている青春映画です。何より日本製青春映画の凡作が陥りがちな「内省」にいかず、行動で物語を語っているところがよいです。しかもそれが細かいディテールと間で紡ぎ出しているところに才気を感じました。
たとえばこの4人の志はそれほど高くないのです。わずかな準備でできてしまうわけですし。でもそれが逆にリアルで親近感を持てます。大林宣彦の『青春デンデケデケデケ』で唯一の大失敗はすぐにうまくなるところなのですが、ちゃんと最初はヘタ。最後もそれほどうまくない。でも許せるような輝きがあります。つまり山下監督の演出のさじ加減がよいということです。このあたりは似たような題材ながら、ウェルメイドな演出でスポ根的なカタルシスを感じさせる『スィング・ガールズ』の矢口監督とは資質を異にするところですね。
さらに2つの音楽的な要素がこの映画を一級品にしました。ひとつはブルー・ハーツの歌。これをチョイスしたところで勝利は決まったかもしれません。私は彼らの歌に思い入れはないのですが(どちらかといえばキライかも)、これほどガールズバンドの青春にはまるとは思いませんでした。しかもあんな内容の歌を女の子があまり深く考えずにやってしまうのが逆におかしいし微笑ましい(。これが同時代のレベッカとかプリプリとかだったりするとぞっとしますよね)。あの歌が似合う世代だということだけで、青春の輝きに圧倒的な説得力が出てきています。もうひとつは劇判の方。実は元スマッシング・パンプキンズのジェームズ・イハさん担当だったのですね。アンビエントな感じのスコアがリリカルなリズムを作り出すサポートをしていました。主演4人は背丈にあった存在感で花マル。前田亜季に初めて感心。ペ・ドゥナは儲け役だったですねぇ。甲本雅裕さんの存在感もさすがでした。
最近青春映画でいいのがないなあ、とか、フジテレビ的な感動ゴリ押しなドラマはやだなあという方、一服の清涼剤はこれです。
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