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2006年7月 8日 (土)

『ヒストリー・オブ・バイオレンス』

Cia001☆☆☆ 観客を大いに挑発するラスト。
 今春見逃していた本作、ようやく名画座にて鑑賞です。ここしばらくクローネンバーグの作品はどうも自分には的はずれなものが多かったのですが、近年の作品の中ではもっとも完成度の高い作品だと思います。そう、完成度です。
 あらすじだけならばほとんど西部劇かアクションものかという内容ですが、クローネンバーグは暴力を視覚的にはっきりとみせます。そして暴力の後も徹底してみせるのです。その結果暴力を使って解決した結果がどうなるかという問題を否応なく突きつけてきます。あのラストシーンはすごいですね。さきほど完成度という言葉を使いましたが、『イグジステンズ』や『スパイダー』がダメだった点がまさにそこで、クローネンバーグ映画特有のおもーいエンディングがないまま、混乱が混乱になって残ってしまっていた。でもこれは違います。クローネンバーグは再び観客を大いに挑発する作品を完成させたのです。自らの手が汚れている主人公を家族がどう受け入れるのか。それを台詞ではなく画でみせきってしまったクローネンバーグの成熟ぶり。すごいです。観客は少なくともハッピーエンドとは想像できないでしょう。けれどあれほど暴れまくった主人公にどうなってほしいか、観客自身が混乱しているはずです。そしてそれこそがこの作品が見事な一級品であることの証明だといえます。ヴィゴ・モーテンセンはいい役者になりましたね。『インディアン・ランナー』の頃から兄貴役だったデビッド・モースと共に、すごくひいきにしている人ですが、今作でも表情が雄弁に物語を伝えています。オスカーノミネーションのウィリアム・ハートもさすがですが、エド・ハリスはこれまたすごいですね。
 目を背けたくなる人も多いかもしれません。しかし向き合う必要がある作品です。でもあのパンフレットはなんとかならんのかなあ。大きすぎです!
(下高井戸シネマにて)

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