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2006年6月10日 (土)

『ニュースの天才』

Shattered01_2☆☆ 突っ込み不足で限界を露呈。
 アメリカの老舗雑誌『ニュー・リパブリック』でおきた捏造記事をめぐるスキャンダルを描く実話ベースのドラマ。ジャーナリズムの現状が抱える(というか抱え続けている)コマーシャリズムとの折り合いを隠し味にしたドラマは、捏造記事を執筆することで名声を得ようとする新聞記者の奇妙な人物像を的確に描写することでなかなかみせてくれます。
 うまいなと思ったのは編集長であるピーター・サースガードのみ私生活のショットを入れたこと。家族持ちである彼の立場がはっきりしたことで彼自身もジャーナリストとしてのポジションに苦悩していることが明確化され、また他社の捏造を暴く記者たちの姿も描くことで、前述の、あるべきジャーナリズムとはという背景を際だたせています。しかしそこが逆に物語のピントをぼかしてしまったキライがあり、クリステンセン演じる記者がとった行動は誰に責任を負うべきかが、彼の行動に関する責任の所在がぼやけてしまいました。確かにジャーナリストなら誰もが踏みかねない地雷であるけれども、彼がなぜその一線をこえたのかは重要なポイントで、そこは踏み込んで描いてほしかったところです。ですから人物造形は的確なものの、物語としては突っ込み不足の印象があります。
 SWシリーズではどうでもよい役だったヘイデン・クリステンセンも、ここではそんな人物像を浮き彫りにさせる演技です。まわりをかためる役者陣もしっかりとしたアンサンブルをみせます。意欲作でおもしろい味わいはあるものの、突っ込み不足で限界を露呈している作品です。

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