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2006年5月 4日 (木)

『イヴの総て』

B0006tp☆☆☆ 題材はもはやスタンダード。しかし下世話にせぬ監督の語り口。
 バックステージものの最高峰として評価されているジョセフ・L・マンキーウィッツ監督作品。この手のクラシック作品の鑑賞において評価が難しいのは、どの作品もかなりの可能性でひとつのスタンダードとなってしまい、後年似た作品が多数できること。そしてそっちを先にみていることが多く新鮮味を感じられないことがあります。そういう意味でこの作品が目新しさこそ感じないものの、それでも充分面白いのはさすがだと言えます。アン・バクスター演じるイヴがどこかしら鼻持ちならぬ女であることを感じさせつつも、下世話な話にしなかったのは監督の語り口の巧さです。
 ただ。この作品を語る上で避けられない作品があります。それはビリー・ワイルダーの『サンセット大通り』。あちらはハリウッド内幕話、こちらはブロードウェイと、話のモチーフが似ているだけでなく、実は製作年度も同じでというこの2本は結果的にオスカーをも争うことになります(結果は『イヴの総て』が14部門ノミネートで作品賞ほか6部門受賞。『サンセット大通り』が11部門ノミネートで3部門受賞)。私は『サンセット大通り』を評価したい。『イヴの総て』がイヴという人物を中心にショービズ世界の恐ろしさを描いたのに対し、『サンセット大通り』は人間そのものの恐ろしさを描いているからです。これは前者がベティ・デイビス演じる大女優に対してイヴとの対比からやや同情の余地のある人物に描いているのに対し、後者がグロリア・スワンソンを恐ろしさと哀れさを併せ持つ複雑な人物であり、ナンシー・オルソン以外、何かしら深い闇を抱えた人物として造形している点からもわかります。
 しかしクラシックとよぶにふさわしい秀作であることには間違いなく、今後もひとつのスタンダードとして語られることでしょう。

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