『ニュー・ワールド』
☆☆☆ 力が入っても作品の力に昇華しないもどかしさ。
待ちに待ったテレンス・マリックの新作は、評価が難しいものになっていました。ボイスオーバーと映像美で綴るマリック節は健在。駄作というには美しすぎるし、傑作とするには空回りしすぎている。かといって佳作なんて無難な表現はとてもにつかわしくない作風であることも間違いないです。
最大のミステイクはボイスオーバーが出てくる登場人物を無用に増やしたこと。主人公を完全にポカホンタスにするべきだった。そして彼女の物語にすべきだった。そして彼女の『ニュー・ワールド』をめぐる物語で充分成立したはずでした。ところがそうしなかったために、物語が駆け足で過ぎてしまう。叙事詩になるところがなれなかった。最後のスミスとの再会も妙にどっちらけに感じられてしまいます。後半がまるで『ピアノ・レッスン』のようで、逆にかの作のスゴサがわかります。
撮影監督が変わったのもマイナスだったかも。何せネストール・アルメンドロス、ジョン・トールといった当代きっての名手の後ですから、エマニュエル・ルベツキでは荷が重かったのかな。撮影は美しいのですが、質のよい観光写真のようで、画が物語を伝えていないと思いました。コリン・ファレルは無難ですがロマンチシズムに欠けています。クオリアンカ・キルヒャーは見事な存在感でした(ほかの役をこなせるかは何ともいえないところ)。くりすちゃんチョイ役で多数出演もまたいろいろ。ベン・チャップリン、ジョン・サベージの『シン・レッド・ライン』組だけでなく、ジョナサン・プライス、ノア・テイラーまで登場。クリスチャン・ベールは彼でなくてもいい役でした。(そうそう、プログラムのウェス・ステューディは写真が間違ってます)
ネイティブアメリカンの描き方、徹底した歴史考証、もちろんわざわざ65ミリフィルムを使った映像へのこだわりと力が入っているのはわかります。しかしそれが昇華されないもどかしさも、また感じずに入られないのです。
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