『Vフォー・ヴェンデッタ』
☆☆1/2 なぞるだけでは能がない。
原作者の1人、アラン・ムーアが自分のクレジットを外せと要求してきたり、ロンドンのテロ事件の影響で公開が延期になったりと、トラブル続きで、レビューでもあまりよい評判をきかなかったので、不安いっぱいでしたが、それほどへっぽこではありませんでした。しかしちょっと評価が難しい作品です。
やろうとしていることはわかるのですが、活劇というにはハッタリが効いていないし、かといってシリアスなメッセージかといえば、それほどあついものを感じない。ピントがぼけた最大の原因は、Vという存在を妙に良心的なものになったことにあります。個人的な復讐が大衆を扇動することと重なるだけで、彼は決して義賊ではない。やろうとしていることは体制側の行動とそう大差はない。また彼がイーヴィに恋をするという人間的な感情を持つことのジレンマもあっさりと通り過ぎる。このあたりはもったいないです。さらに現実の方がより巧妙化、複雑化しているであろうと観客に思わせるのもデストピアの世界を描いている映画としては致命的な欠点です。ヒューゴ・ウィービングはご苦労さんな役どころ(報われないのは辛いなあ)。ナタリー・ポートマンも丸刈り損です。儲け役はスティーフン・レイで、むしろ映画としては彼が主人公でもありかもしれません。
やはり原作をただなぞるだけでは能がないというもの。コミックの映画化は一筋縄ではいかないということでしょう。
(TOHOシネマズ六本木ヒルズ2にて)
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント