『パッチギ!』
☆☆☆1/2 人間として心と体をぶつけられる若者の姿
昨年度の賞を総なめしたこの作品は、文字通りお見事!という他はない力作でした。井筒和幸監督の作品、実はみたことがなかったのです。理由としては彼が作る世界(たとえば『ガキ帝国』)に興味が持てなかったことが大きいと思うのですが、この作品は在日という背景を正面からとらえることで、ケンカというモチーフが大きな説得力を持ちました。イデオロギーではない肉体のぶつかりあい、衝突から生まれる新しい世界と、それでも跳ね返される壁の厚み。イムジン河、京都、そして60年代の若者文化を織りこみながら、どこまでも真摯な視点で描かれる群像劇は、同じ在日を描いた『GO!』がきわめてパーソナルな視点で描いたことで普遍性を獲得した犠牲に脆さを抱えたのとは対照的に、ドラマとして強靱な生命力を得ました。若い役者陣はみな体を張ってよくがんばっていました。沢尻エリカさんは儲け役。ちょっと評価されすぎかな。余貴美子さんのイヤミな京都女性は強烈でした。
井筒さんのTVでの活躍ぶりに批判的なみなさま。だったらこういうの作れる人、他にいますか? こういうテーマの力作が作られること、そして内省的でなく、外へ向けて声をあげている映画であること、さらにその上できちんとエンターテイメント性を持っていること。今の日本映画界に文字通りパッチギ!をかます秀作です。
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