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2006年3月31日 (金)

『シリアナ』

20060423162315*** 誠実な政治陰謀劇。
 予告編がとてもよくできていて期待していた作品でしたが、仕上がりは傑作というには微妙に違うなというズレを感じる作品となりました。登場人物がたくさん、話が込み入っている…。それは否定しません。事実私もかなり理解に時間がかかったところがあります。しかし作品の完成度とは無関係。むしろそれはやはり演出術の違いに起因するように思います。
 まずはこういう題材をハリウッド資本で撮ってしまったことを評価したいと思います。石油をめぐるアメリカの官民癒着構造と政治密着はすでにさまざまな方面で指摘されていますが、サウジアラビアを想起させる仮想国シリアナの石油利権をめぐるドロドロは、アメリカという国が内包する巨悪をあぶり出します。アメリカのポリティカル・フィクションが面白いのは、ワルのスケールの違いですね(笑)。それからアラブ世界の人がどうみるかわかりませんが、少なくとも描き方がステレオタイプではなかったし、彼らに対して無理解でもなかった。この点もきちんと評価すべきです。
 『トラフィック』との類似を指摘されますが、質は段違いにあちらでしょう。というのも前述の通り、話の交通整理はできてきているものの、エピソードの綴り方に軽重がない。ゆえにどれも通り一遍になってしまっています。それからキャラクターの掘り下げ方がうまかった。ちょっとした役にもアクセントがありました。キャストはみな適材適所。クルーニーはまるでブライアン・デネヒーのよう容姿でびっくりでした。
 ちょっと関係する書籍を読んでみたいと思わせる作品。必見とまではいかなくても、こういう作品が自分の視野をひろげてくれるなのだと思います。
(109シネマズMM横浜10にて)

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