『高校教師 飼育の校舎』
☆☆☆ 主役が魅せる青春の苦さ。
忙しい時に限ってこういう作品に出会うんですよね。何気なくつけていたWOWOWでオンエアされていた本作、ついつい最後までみてしまいました。そういう力のある作品に出会うからVシネマはあなどれません。限られた空間とわずかな登場人物で語られる物語は『羅生門』のように、みえない真実をそれぞれが語る形になっています。それを謎解きでないところ、すなわち誰もが青春を振り返った時に感じる懐かしさと苦さにカタルシスを生み出させたところが素晴らしいのです。もちろん拙い描写はたくさんありますが、それを補ってあまりある情感あふれるショットがたくさんあります。
蒼井そら。彼女がこの作品の大きな魅力であることは疑う余地がありません。グラビアで顔は知っていましたが動く姿は初めて。素晴らしい素材ですね。空気を表情で出せる希有な才能を感じます。アダルト業界出身のタレントさんについてはいろいろな意見はあると思いますが、私はそちらから一般作品に顔を出せる人は、表現者としてのフィールドは違えど、それなりの個性と才能があると思っています。セリフの滑舌などは別として、表現者としての彼女の頭の良さ、センスの良さを随所に感じさせてくれます。その分共演している男優陣の器の小ささも目立ってしまいましたが。また大友良英が担当した音楽は低予算の中でアンビエントなメロディが印象的でした。
蒼井そら主演だからという色眼鏡でみてしまうにはあまりにも惜しい佳作です。
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