『サード』
☆☆☆ 演出不在を補ってあまりある出演者の存在感。
CATVでオンエアされていたのを、とうとうそのままみてしまいました。忙しい時だからこそみちゃうんですね。ああ、眠い(涙)。で、この作品は少なくとも眠気にも勝ち、みる価値もあった佳作です。
東陽一監督作品をとおして全部みるのは初めて。というかこの人の何もない展開で挫折した作品が2本あるのですが、この作品は脚本が寺山修司で、そのあたりがうまく処理されていました。青春時代故のもやもや、何とか今を抜け出したいという衝動。群像ものとしても奇妙な味があり、出演陣が不思議なアンサンブルを醸し出していました。特にただいるだけで「青春」という時間を体現してしまった永島敏行。こちらも存在自体が思春期の性衝動のような森下愛子。この2人の出演が、この作品が凡百の青春映画とは一線を画す仕上がりになった大きな要因でしょう。ただ少年院でのドラマと、そこに至るまでの回想とが融合されているとは言い難く、その点は残念でした。一言でいえば演出不在、それがこの監督のカラーなのかもしれませんが、あまりにも青臭いタッチに感じてしまいます。それは少年院でのディスカッションなどの場面で顕著になります。
ウェルメイドではなくとも、良質の素材をそのまま味わうような素朴さは魅力充分。そこを超えられたかどうかは別問題として、一見の価値はある作品です。
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