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2006年1月 6日 (金)

『チキン・リトル』

20060108133833☆☆ 模倣か、伝統か。迷走は続く。
 作品的には平均レベル。特筆すべき要素は何もありません。みたことのあるようなキャラクター、みたことのあるような物語、みたことのあるような世界観。なぜそんな既視感にとらわれるか。そこもふまえて、まずもっとも議論されるべき点から行きましょう。つまりディズニーはどこへ行こうとしているのか。この平々凡々な作品に往年のディズニー作品の匂いは感じられません。そう、ピクサーの匂いしか。
 作品から自分たちが作りたいものがみえてきません。何かピクサーっぽい物語の世界観やキャラクターたち、それから『アイス・エイジ』のFOX風のハートウォーミングな展開とドタバタ、そして『シュレック』のドリームワークス風の皮肉とパロディ。これらフルCGアニメーションで先行している会社の作風をいいとこ取りして、ディズニー風にまとめてみましたという感じがぬぐえないのです。確かにこれらの会社は興行的に大ヒットした作品を生み出しています。しかしこれらの会社も試行錯誤を繰り返しているのです。
 ディズニーアニメの曲がり角はいくつかありました。忘れられていますが『リトル・マーメイド』の前、70年代後半から80年代前半にかけて暗黒の時代があったのです。それが『リトル・マーメイド』『美女と野獣』『アラジン』『ライオン・キング』で息を吹き返すのです。ではなぜディズニーアニメが再び暗黒の時代を迎えようとしているか。それはフルCGではないからなのではなく、物語がつまらないからです。ディズニーのすごさは実は新しい表現や技術を使って普遍的な物語をわかりやすく伝えたことにあると思います。今一度、ディズニーらしさはどこにあったかということを考えるべきです。唯一おもしろかったオープニングや、途中で出てくるミッキーマウスのキャラクターのように、ただギャグのために自分たちの財産を食いつぶすだけでは仕方がありません。そしてあまりにも保守的な作り方をしている。言い方を変えればヒットしそうな要素でしか作っていない。この作品を見終わって、そんな寂しさを感じました。
 パイオニアになるのか、フォロワーになるのか。現在のディズニーアニメの迷走と困惑がわかる作品です。そして少なくともここには、これからの希望は感じられません。
(WMC多摩センター3にて)

 なおこの作品は国内2カ所(AMCイクスピアリWMC多摩センター)でDLPよるディズニーデジタル3-Dシネマで上映されています。DLPがフルCG作品と親和性が高いと感じたのは以前にも話しましたが、ここまでくるとすごいですね。もはやテーマパークの世界です。『ポーラー・エクスプレス』のIMAX3Dでも感じましたが、3D版がある場合は、ぜひそちらでみることをおすすめします。作品が別物です。私はWMCでみましたが、両方でDLPを経験している立場で言うと、WMCでみることを勧めます。でもイクスピアリは映像に関わる部分を総取り返したなんてきくと気になりますねぇ。DLPでは映写機が1台ですむ、偏光ずれが起きにくいなどのメリットもあり、この点は注目ですが、コスト面からも一気に普及というわけにはいかないでしょう。このシステムはデジタル上映管理システムドルビーデジタルシネマでしか対応していないようです。

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