『ランド・オブ・ザ・デッド』
☆☆☆ 職人芸のような描写と、新しいゾンビ映画を切りひらこうとする心意気に感服。
ロメロ待望の新作は、なんとゾンビ! それだけでもファンなら感激なわけですが、不安がいっぱいでもあります。なぜならもはや伝説にまでなろうとする自分の作品に、結果的に泥を塗られたらいやだなという思いがあったからです。しかもここしばらくの彼の作品はおもしろいとはいえないものが多かったのも事実。しかし。結論から言ってしまえば、この作品は期待に違わぬ力作でした。
『ドーン・オブ・ザ・デッド』のように走るゾンビもいいけれど、こっちの描写はまさに王道。スピード感などに頼らずとも、スリリングで怖い。そして残虐描写だけに終わらない物語の深み。いつものように物語の背景をすぱっと省略して始めてしまう潔さ。しかしそこで終わらない。今作でも現代社会を巧みに取り入れた設定、そして知恵のあるゾンビたち。ワンアンドオンリーの新しいゾンビ映画を創ろうとする開拓者精神。いつもながら見事です。そしてデッド・レコニング号のカッコよさ、花火にみとれるゾンビと、ラストの行進の美しさ・・・でも何と言ってもおもしろい。それで充分。あっという間の93分でした。キャスティングはジョン・レグイザモやデニス・ホッパーのようにやや有名どころが多いとはいえ、これまたいつもながらの適材適所。FOXチャンネルで放送中の『墜ちた弁護士ニック・フォーリン』。このドラマはすごくおもしろくて、最近唯一みているTVドラマなのですが、本作の主演、サイモン・ベイカーはそのドラマの主役なのですが、これで少し名前が売れるといいなあと思います。またアーシア・アルジェントはいいなあ。本当にいい! ちょっとストライクきちゃいましたって感じ(汗)。
これから新しいサーガは始まるのでしょうか。また米国盤DVDはディレクターズ・カット版(といっても97分らしいが)らしく、まだまだ興味は続きそうです。とりあえずロメロが帰ってきた、描きたいものを描ける状況に帰ってきたことを喜びたいです。
(TOHOシネマズ川崎8にて)
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