『頭文字D』
☆☆☆ これでいいのだという思いと、これでいいのかという思いと。
『インファナル・アフェア』シリーズの監督の新作は、なんと日本のコミックが原作?! それを聞いて妙な胸騒ぎを感じた方も多いことでしょう。その後も漏れ伝わってくるのはレースシーンは日本ロケでオール実写、キャストは香港勢、アンソニー・ウォンがおやじ(しかもいつも酒飲んで役作り)など不安を増幅させるものばかり。しかしそれは杞憂に終わりました。ちゃんと映画になってます。
一番心配したのがこの映画の肝になる街道バトル。ジャッキー・チェンの『デッド・ヒート』みたいになったらいやだなあと思ってましたが、これが抜群の出来映え! 『ワイルド・スピード』もよくできていたけれど、この迫力は尋常ではありません。サウンドデザインも秀逸で、こっちはハナマル。もう一つの心配事は日本を描けるかどうか。これがまた違和感皆無。みんな日本人にみえるし、少なくとも『頭文字D』の世界観をぶち壊すことはありません。アンソニー・ウォンなんて最高。一番彼がはまってました。(なお本作は吹替版の上映館が多数で、私もあえて吹替版でみました。DVDには原語版が収録されるはずなので、それはその時にみたいと思います。)まあ青春の痛みとか、そういう群像劇っぽい要素は薄まっていましたが、それはコミックの映画化としては正解でしょう。この映画の観客は、やはり車をみにくるわけですから、そこに不満はありません。
では何がひっかかったかというと、やはりなぜ日本ではできないのかという部分。日本で作っていたら『デビルマン』かな、いやそもそも企画の段階で出ないかな、とかいろいろ思ってしまいました。本作をみる限りではコミックの映画化は香港の映画人の方がよく理解しているかもしれません。とりあえずこの作品はカーバトルを背景にしたスポ根ライバル物語として、存分に楽しめる1本に違いありません。そして見終わった後、映画館を出る時に邦画では何をやっているのかな?と劇場内のポスターをながめて、少し寂しい気分になるのです。
(109シネマズMM横浜2にて)
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