『ビフォア・サンセット』
☆☆☆ あの暗転で終わらせられる成熟した描写力。
先日みた『恋人までの距離』の続編。これはいいですね。私は前作より好きです。それはきっと自分の実年齢や立場が近いことにも関係しているとも思いますが。まず尺が短いのがいい。これ以上にダラダラと続けられたら、ちょっといやだったかもしれないこの物語をきちんと小品としてまとめた才覚は素晴らしいです。不必要に2時間を超える映画が多い中、描きたい世界にあった小さなキャンバスを選択できない監督が昨今は多すぎです。(前作は少しそう感じた。あれでも長い)
今回は物語と同様に実際に時間がたっているのですが、こういう発想自体はそんなに珍しくはないです。我らが日本の寅さんなんて、そういう感覚に近いし、クロード・ルルーシュの『男と女』なんて、主演2人が同じで、もっと1と2の時間があいています。しかしこの作品は蛇足にならずにすみました。それは小品で収めた作り手の謙虚さと脚本の巧さ、そして演じ手の技量によってでしょう。どちらもあの1日を引きずっているにも関わらず、それを素直に認められないもどかしさを観客と共有させ、最後にあの暗転で終わらせる描写には成熟したものを感じます。イーサン・ホークとジュリー・デルピーはさすがの好演。特にジュリー・デルピーには感服。年相応の生活感と心のゆらぎをにじませつつも、なんとチャーミングであること! 歌声も素敵でした。(しかしフランスの女優さんは年を上手にとる人がたくさんいますね)
はたして続きはあるのか? ちょっと怖い気もするけれどでもすごくみてみたいという気にさせられる、そんな世界観を持った佳作です。
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