2017年10月 8日 (日)

『デルス・ウザーラ』70ミリプリント版(フィルムセンター)

 昨日10月7日にフィルムセンター大ホールでの『デルス・ウザーラ』70ミリ上映をみてきました。素晴らしい経験でした。twitterでつぶやいたら予想外に賛同していただけた方が多くいらっしゃいました。そこで自分の備忘録と、なぜそこまで自分が『デルス・ウザーラ』に魅了されたのかを、ここにまとめておきたいと思います。かなり長い文ですが、おつきあいいただければと思います。

<黒澤作品との出会い>
 私が映画に興味を持ったのは小6から中1にかけてで、当時は名古屋在住でした。1970年代後半の名古屋には、東京や大阪と比較しても名画座という物がほんとんどありませんでした。ビデオというメディアもなかった時代ですから、旧作をみる機会は本当に限られていました。その中で初めての黒澤体験は、1982年に地上波テレビ放送でみた『七人の侍』で、3時間圧倒されたというのが実感でした。その後、その年がたまたま東宝創立50周年だったので、年末にかけて旧作の特集上映が東宝上映館(名古屋はエンゼル東宝)でありました。その中で『生きる』(同時上映は『駅STATION』でした)と『天国と地獄』をみることができました。やがて川崎に転居してからは首都圏の名画座をまわって黒澤作品を数多くみることができました。リアルタイムの黒澤作品は1985年の『乱』からです。オールドファンからはあまり評判はよくないですが、神の視点から俯瞰したように描く時代劇は当時の私にはかなり衝撃的で好きな作品です。

<『デルス・ウザーラ』との出会い>
 1980年代中頃からビデオソフトが出始めます。しかし黒澤作品の国内正規版はなかなか出てきませんでした。ちなみに『乱』までの黒澤作品の権利を持っていた会社は5社。大映(『静かなる決闘』『羅生門』)、松竹(『白痴』)、ポニーキャニオン(『乱』)、CBSソニー(『デルス・ウザーラ』)、そして残りが東宝なのですが、この中で一番早くに国内正規版がリリースされたのは、実は『デルス・ウザーラ』でした。この作品は配給が日本ヘラルドだったため、当初はCBSソニーがVHSをリリースしていました。しかも当時には珍しいフルフレームのノートリミング版で。初めてビデオでみた黒澤作品がこれでした。いつもの黒澤作品らしい激しさはありませんでした。でも画が写実的でありながら物語は寓話的な表現と、静けさの中にも厳しさと強さを内包しているその語り口は素晴らしいの一言で、心に残りました。最後の「鷲の歌」もぐっときました。当時の自分の鑑賞メモには「自然と人間をワイド画面で見つめる力業。」と記してあります。作品自体の力もそうですが、過去の黒澤作品のあと、『乱』をみてから『デルス』をみた順番もよかったのかもしれません。今から思えばこの作品は、カラーになった後期黒澤作品と、その前の作品との転換期にあった作品ですから、作風の変化を自然に受け入れられたのかもしれません。

<『デルス・ウザーラ』の受難>
 『デルス・ウザーラ』は前述のVHSリリース状況でわかるように、ソ連作品と言うことで他の作品とは扱いが違うことが多かったです。BS放送などでもかかることは他の黒澤作品と比較しても少なかったですし、特集上映でも、何本かで構成される時には上映されることが少なく、全作という時でも外されることが少なくなかったと記憶しています。ここ最近でいえば2010年の黒澤生誕100周年時のシャンテシネでの上映はありましたが、同企画の大阪上映時には上映されませんでした。
 またビデオリリースでも残念な扱いが続きます。初リリース時のCBSソニー版は字幕打ち込み状態での日本公開時のポジフィルムから起こされた素材。VHSは基本的にずっとこのままでした(最終的には東宝から再リリース)。一方DVDですが、まず東宝から他の黒澤作品と一緒にリリースされます。しかし他の黒澤旧作群が徹底的にブラッシュアップされているのに、『デルス』はほったらかし。画質はお世辞にもよいとは言えず、音声はモノラルのまま。とても残念でした。ただ同梱されていた約50ページに及ぶブックレットは本当に貴重です。ソローミン氏の文章もありますが、もっとも興味深かったのが、黒澤組でスクリプターとして、そして時にはきっともっと大きな役割を果たされていたであろう野上照代さんの「『デルス・ウザーラ』製作の現場」という文章でした。今から考えれば後述する「樹海の迷宮」にも掲載されていた製作日誌を抜粋した物だったかもしれません。
 しかし時には海外製作と言うことでの幸運もあります。この後、意外なところからも正規版が登場します。なんとロシア映画評議会(RUSCICO)が素材化したものを日本でロシア映画を多数リリースされているIVCが発売したのです。音声は初の5.1ch! 特典も日本初のものがある! もう狂喜乱舞ですぐ購入しました。しかし本編が2枚に分割され、音声も5.1chにはなっていたけれど勝手にSE類が付け足され(比較するとわかります)、画質についても悪くはないけれどそこまで劇的な変化とは思えず、失望感も大きい商品でした。その後、もう一度、2013年にオデッサエンタテインメントより3度目のDVDリリースがありましたが、世はすでにHD映像全盛の時代。ブルーレイを楽しみにしてこちらは購入しませんでした。しかし国内正規版はいまだにどこからもブルーレイは未リリース。東宝はDVDで出した他の旧作はちゃんと発売しているのに・・・。本当に残念です。

<「黒澤明 樹海の迷宮」の衝撃>
 2015年に『デルス・ウザーラ』をめぐる状況に大きな変化をもたらす書籍が登場します。小学館から出版された「黒澤明 樹海の迷宮」です。本書は大きく分けて3つの要素で構成されています。まず製作に至るまで、そして完成後を追った笹井隆男氏のルポ。さまざまな記録を検証した新事実の数々は驚きでした。そしてデルス・ウザーラの決定稿(これもびっくりだった)。でも何よりも読んだ私が衝撃を受けたのは野上照代さんの撮影日誌でした。『デルス・ウザーラ』の撮影が時期的にも物理的にも本当に大変だったというのは有名な話です。晩年黒澤監督がかぶってらっしゃった帽子は、この撮影期間中にかぶっていたものを作り直して使っていたそうです。遺作『まあだだよ』公開時のインタビュー時では、「あの時の撮影は大変だった。あの苦しみを耐えたのだから、他の事も何でもできる、そんな気持ちでかぶっている。」と発言しています。そんなすさまじい状況をずっとそばにいた野上さんがひたすら客観的に記録しています。もちろん映画監督という職業柄、かなり個性的な方であることは承知しています。実際、そんな現場の映画監督の典型的なあり方を知らないと、ただのわがままな人ととらえられても仕方がないほどの言動が連発です。しかしその先には、こうやってあの名作を完成させたという事実があります。『トラ・トラ・トラ』の挫折や自殺未遂騒動の直後に、初めての海外資本の製作現場(しかもロシアの想像を絶する地形&気象条件だった)で、日本人スタッフはわずか5人、あとは200人近いロシア人と2年間奮闘した60歳代での黒澤監督。読み終えて、なぜか映画のエンディングでも使われたあの「鷲の歌」が頭の中で流れてきたような気持ちと共に、胸いっぱいになってしまったことを覚えています。

<いくつもの幸運と情熱の結晶、素晴らしかった70ミリプリント上映>
 そして。10月7日、京橋のフィルムセンターに足を運びました。ものすごく久しぶりだったと思います。どのぐらい人が来るのか読めなかったのですが、絶対に見逃せない!という思いがあったので、朝8時過ぎには並びました。映画のために並ぶなんて久しぶりでちょっとワクワクしました(笑)。上映前のフィルムセンター主任研究員をされているとちぎあきらさんがご挨拶をされます。そこでも述べられていましたが、今回の上映プリントは松江陽一プロデューサーから寄贈されたものだそうです。(これを聞いた時にいよいよコンディションが心配になりました。) 
 いよいよ上映開始。開巻早々に日本ヘラルド映画のロゴがうつります。そう、黒澤作品が好きな人に言うまでもありませんが、今はなきヘラルドに黒澤作品は『デルス』と『乱』の2度救われています。私自身名古屋在住ということもありましたし、映画ドハマりの頃の自分には、東宝東和よりもヘラルドが重なるので、そこでまずぐっと来ました。注目の70ミリプリントの状態ですが、これがびっくりするぐらいコンディションがよかったです。1975年ロードショー上映時の70ミリプリントとは思えない美しさでした。猛吹雪の冬、緑が目にしみる夏、あの太陽と月が並ぶ場面も見事な色調でした。色むらもこれはもともとのソ連製フィルムの限界だったと思われますし、退色というよりは当時の色味がきちんと出ています。もちろんフィルム傷などはそれなりにありますが、フィルムやパッケージソフトも含めて少なくとも私が今まで経験した『デルス・ウザーラ』の中ではもっともよい状態で楽しめたプリントであることは間違いありません。
 さらに驚いたのがその音。撮影時に70ミリカメラなどを使わなくなり、さまざまなレンズもフィルムも優秀になった80年代。画質上のメリットは以前と比較すると小さくなっていましたが、実は70ミリプリント上映時のもう1つのメリットが音でした。35ミリプリントの基本が光学トラックだったのに対し、70ミリプリントは磁気トラックが基本。立体音響も6トラックまで(フロント5ch、リア1ch)まで可能です。耐久性はおちるのですが、SN比は段違いに優秀で、セパレーションのよい音を当時としては楽しめたのです(まあ、スペック的にはラジカセなどと同じレベルですが)。今回の『デルス・ウザーラ』の音はまさにその音でした。光学トラックほどぼやけておらず、デジタルサウンドほどの鮮やかすぎて時に耳障りになることもなく、耐久性が落ちてノイズ出まくりなどということもなかったのです。
 twitter上でも状態の良さをたくさんの人が驚いていました。というか1975年当時の70ミリプリントがどうなっていそうかをイメージできる、プリントの「常識」を知っている人の方が驚きは大きかったと思います。松江さんはどうやって保管されていたのか不思議でなりませんでした。おそらく上映機会の少なさ、黒澤監督作品というネームバリューやオスカー受賞という「重み」(プリント全巻の重量自体も重いですが)、何より松江プロデューザーをはじめとする制作側、東宝ではなくヘラルドだったという興行側、そしてフィルムセンターのスタッフさんをはじめとするアーカイブの関係者が熱意を持ってバトンを手渡すという幸運が重なったのだろうとしか言い様がありません。

<ただただ感激したこと>
 さて。もうひとつだけ話をさせてください。当日11時の回で私の整理券番号はかなり前の方でした。ホール中央は関係者席でしたが、まあ自分もそのあたりでみたかったのでその前の列に座りました。しばらくして後ろの関係者席に女性が座られました。ところがその声に驚きました。映画ファンにも馴染み深いその声は、あの野上照代さんだったのです。黒澤好きにもかけがえのない存在ですが、デルス好きにとってはもっと重要な存在である野上さん。次々と他の関係者が挨拶のために近くにいらっしゃいます。他の客席の方も何名か気づかれていたと思います。もちろん私も振り返ってご挨拶したかったのですが、プライベートでいらっしゃっている可能性もあることを考えると、ぐっと我慢しました。とちぎさんのあいさつで、観客に野上さんが紹介されました。場内から大きな拍手。私もすぐ振り返って大きく拍手をしました(本当は立ち上がりたかった!)。上映が終わって退場する時、どうしても一言申し上げたい気持ちを抑えられず、野上さんに「同席できて本当に光栄でした。ありがとうございました。」とだけ声をかけさせていただきました。野上さんからは「ありがとうございました。」と返していただきました。

<結びにかえて>
 DCP全盛の今、フィルム自体を扱えるところも減少し、ましてや70ミリプリントを上映できる場所は本当に少ないのですが、フィルムアーカイブであるフィルムセンターが、今回その上映設備を備えたことはまさに英断です。そして開館以来初の70ミリプリント上映作品として、私の大好きな『デルス・ウザーラ』を選んでいただいたことも、そのプリントがとてもよいコンディションで保管されていたことも、あの野上照代さんと前後の座席に座って『デルス・ウザーラ』をみられたことも。何という幸運でしょうか。映画好きとして幸せな時間だったとしか言葉が見つかりません。関係のあるすべての皆様に心から感謝の気持ちをお伝えしたいです。ありがとうございました。

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2017年1月 4日 (水)

BD: Dead Ringers: Collector's Edition

Bddeadring 邦題『戦慄の絆』

 クローネンバーグのサイコスリラーの傑作。パッケージで購入するのはすでに3度目(しかも全部米国盤)なのだが、一度再生するとなかなか止められないスルメタイプの作品で、それだけの価値はある名作。今回もまたShout!Factoryはこだわっていて、まずその収録フレーミング。1998年にリリースされたクライテリオン盤のジャケットによると、撮影時にはフルフレーム(1:1.33)で収録してあって、それを劇場上映時にヨーロピアンビスタ(1:1.66)でフレーミングするようにマスクをかけたのだそうだ。その後ワーナーが2005年にリリースしたときはアメリカンビスタ1:1.85収録ではあったが、発色が抜群によくて、はたしてどちらが意図してあるものなのかと首をひねるほどの違いがあった。今回は1:1.66に加えて、1:1.78というまた不思議な画角の2種類を収録してリリース。特典はやっぱりテンコ盛り。

まずは1:1.66フレーム。今回新たな2Kスキャンマスター。
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続いて1:1.78フレーム。そもそも画調が全然違う。

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そしてWOWOWでオンエアされた時のもの(1:1.85フレーム)。画調が健康すぎ?
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2017年1月 3日 (火)

BD: To Live And Die In L.A.: Collector's Edition

Bdtolivedie 邦題『L.A.大捜査線/狼たちの街』

 W・フリードキン監督の1985年作品。そのドライで乱暴な展開が信者を生んでいて北野武も好きな作品としてあげている。何かわかるかも。日本でもBDはリリースされているが、特典が充実していたのでこっちをポチッと。ビックリしたのは別エンディングがあって、なんとそっちは2人の捜査官が両方ともぬくぬくと生き延びて、アラスカのアンカレッジにとばされたという終わり方だったこと。こんな終わり方が許されるわけがない(笑)。ただこんなこともしなきゃならないほど、フリードキンは当時(今もか?)製作者側の信用を失っていたとも言えるかと思う。スコアを担当したワンチャンの姿に時の流れを感じた。

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2017年1月 2日 (月)

BD: The Exorcist III: Collector's Edition

Bdexorcist3_3 邦題『エクソシスト3』

 そもそもパッケージソフト自体を全然購入していないので、米国盤も年に数枚程度なのだが、ほとんどがこのShout!factoryのもの。『遊星からの物体X』の時も書いたが、今後も興味深い作品が並んでいる。今回も4枚いっちゃいました(汗)。
 さて本作は1作目と同じぐらい私は大好きで、劇場でみた時も1作目とは別な雰囲気で怖かった。黒沢清も大好きな作品と言えば、そのテイストがわかろうかというもの。今回の目玉は何といってもディレクターズカットを収録していること。
 結論からいうと面白くなかった。そもそもタイトルに偽りありで、エクソシスト(悪魔払い)の場面がない!(ちなみに本作最初のタイトルは"William Peter Blatty's LEGION"。エクソシスト3ではなかった。) それどころかぬわんと、あの1にも出てきている○○○□□(□は漢字、○はカタカナ!)が一切登場しないバージョンなのだ! 確かに何でこいつが出てくるのだ?と劇場公開時に思ってはいたが・・・、そのかわりにブラッド・ダリフが大活躍(笑 これで本作をすでに知っている人は察しがつくでしょう?)。話によると公開前の段階で「これじゃ客は呼べぬ」と映画会社に判断されて追加撮影&再編集をしたらしい。確かに完全にサイコスリラー寄りでかなり地味な展開となる。私のようにブラッド・ダリフが落涙すると「いよっ!」と声をかけたくなるような男でえすら退屈だったのだから、万人には勧められない。ついでに言えば、フィルム素材で見つけることができず、仕方なく編集用のデイリーで使っていたVHSテープから起こした素材を利用しているとか。まあ事情はわかるとはいえ、素材がSDビデオ素材からと言うのはやはり興ざめで納得がいかない!
 本作大好きな人と珍品好きな人はぜひ。

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2017年1月 1日 (日)

謹賀新年2017

なかなか人生、思うようにはいきませんが、ささやかなことに幸せをみつけたいなあと思います。そう考えていることが、すでにオッサンの証拠ですね(汗)。とりあえず最近感性の衰えを実感しているので、よいものにどんどん触れていきたいと思います。そのためにはまずみる本数をふやさないと!

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2016年7月29日 (金)

『シン・ゴジラ』

Singodzi ☆☆☆1/2 間違いなく2016年の今にふさわしい見事なゴジラ映画。
 今夏、というか今年一番の期待作であり、一番不安だった今作は、凄まじかったの一言でした。間違いなくここ数年の邦画の中でも最高の1本です。このあと完全にネタバレです。できるだけ事前に情報を入れない方がよいので、未見の方は読まないでください。

 評価は分かれるかもしれません。とにかく庵野さんが全てをさらけ出したような内容でよくもわるくもどこを切っても庵野総監督印で庵野秀明リミックスみたいな映画ですから。岡本喜八ちっくなスーパーの連打、異常にディテールが細かい対ゴジラの自衛隊の攻撃、役者陣の面構えだけ並べた手法、エヴァみたいなクライマックス、そしてきちんと街が描きこまれ、そこで怪獣を大暴れさせたこと(川崎市民としては多摩川防衛線の攻防は怖かった)。今までの庵野さんが好きだったもの、描きたかったものを大発散。そうすることを徹底してこだわった結果、ゴジラ映画の殻はきっちりと壊した。今までもゴジラシリーズはファンから多くの期待をされました。その中に「そろそろ大人の鑑賞に堪えるもの」があったと思います。そういう意味で北村監督や金子監督ですら打ち破れなかったものを庵野総監督はやりとげたのですから。ここはちゃんと評価すべきです。
 それでいてちゃんとゴジラ、というか特撮映画でした。あの形態の変化はいいアイディアだったし、得体の知れない生き物というイメージはよく出ていた。放射能の問題からも逃げなかったし、ではどうやったら倒せるかも非現実的にしなかった。あの電車を使ったアイディアは大好きです。
 そして何より邦画のダメ要素になりがちな部分を抑えて、かなり限定された状況での人間ドラマにしたのが成功した要因だと思います。具体的に言えば庶民視線をすぱっと切ったのがよかった。お手本は喜八監督の『日本のいちばん長い日』だったのでしょうか。これに庶民視線や恋愛が絡んでたらリメイク版の『日本沈没』(樋口さん!)になるのです。また演技陣に芝居どころを設けなかったのは英断ですね。誰にも見栄を切らせなかった(例外は石原さとみのみで唯一の目立つ欠点)。またその中で物語の核になったのが組織論。朝日新聞で柳下さんが皮肉っていたけれど(あの批評はひどいと思いました。あれは批評じゃないです。)、あの状況はポスト3.11の日本だからこそ説得力があって、プロが自分の責任を果たす中で、ではリーダーが果たすべき役割が幾つも提示されていたのは興味深かったです。
 間違いなく2016年の今にふさわしい見事なゴジラ映画。やりたいことをきちんとやって、それで魅せる内容にしたのは凄い。私は断然支持したいです。
 最後に余談ですが音響のこと。この作品が3.1ch(つまりサラウンドchがなしということですね)で処理されていることが話題になっていますが、私は肯定派です。やっぱり映画音響は前方定位が基本だし、あれだけ台詞が多い作品で不必要に後方chに回していたら違和感が強かったかもしれません。映画音響は音源の定位(基本はスクリーン上)、複数の要素(台詞・劇判や効果音)、自然な音場の三要素のバランスが大事で、非日常的な爆音ばかり評価してはいけません。またあれだけ劇伴や効果音でモノラル音源を露骨に入れるのも庵野監督らしいと思いました。
(TジョイPRINCE品川 シアター11にて)

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2016年7月28日 (木)

BD: Just Desserts: The Making Of "Creepshow"

Bdjustde  なんとあの『クリープショー』の舞台裏を描いたメイキングドキュメンタリー。ずっと気になっていたのだが、めでたく奇跡のBD化(というかこのぐらい特典映像で頼むよ)。でもこれが『クリープショー』のファンなら涙ものの内容。残念ながら英語字幕無しだったのでヒアリングのみではかなり理解はいい加減かもしれないが、嬉しかったのが多くの俳優陣とのエピソードだ。あらためて感じたのが、ロメロは俳優陣に信頼されていたのだなということ。何しろあらためて驚くような豪華なキャストだ。ヴィヴェカ・リンドフォースレスリー・ニールセン、テッド・ダンソン、ハル・ホルブルック、エイドリアンヌ・バーボー、E・G・マーシャルという作品に格を与えた役者陣に加え、トム・アトキンス、そしてエド・ハリスなど、これがロメロ作品出演2作目以上になる気心が知れているメンバーもいる(そして鬼籍に入られた人も実に多い)。もちろんドキュメントではロメロもサビーニもたっぷり語ってくれます。ノーマン・イングランドさん、これみてるかなあ。

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2016年7月27日 (水)

BD: Escape From New York: Collector's Edition

Bdescny 邦題『ニューヨーク1997』

 ジョン・カーペンターの大傑作。最近気合いの入ったラインナップで我々を驚喜させているShout! Factoryから昨年リリースだったのだが、以前『ザ・フォッグ』がDVDとあまり印象に違いがないという期待はずれな画質で注文しなかった(ただ今から考えるとかなり頑張っていたのかも知れない)。でも今夏BSプレミアムでオンエアされるのを知ったら、なんか待てずに結局オーダーしてしまった。これが大正解。まずその画。こんなに綺麗な本作、みたことがない。いやあ、カーペンターの夜はこれだよこれという感じがしっかりと出ている。ただ音が妙によくて(特に劇伴)変なリミックス盤を聞かされているような違和感が初めはぬぐえなかったが感じが、これも慣れれば大丈夫。もともと米国盤DVDにあった特典はほぼそのまま移植されていて、特典がまったく無い国内盤の全く気合いが感じられない仕様と比較しても、さすがだというしかない。ちなみにShout! Factoryは今夏に『バタリアン』『ミッドナイト・ラン』『SFボディスナッチャー』など、いくら使わそうとしているのかと悩みたくなるようなラインアップで、さらにこの冬に『エクソシスト3』『L.A.大捜査線/狼たちの街』『戦慄の絆』、そして『宇宙からのメッセージ』がラインナップされているので、そちらも期待せずにはいられない。

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2016年7月26日 (火)

BD: THE NEW WORLD (Criterion Collection)

Bdnewwc 邦題『ニュー・ワールド』

 テレンス・マリック&エマニュエル・ルベツキとの初コンビ作がクライテリオン盤で。→review 実はすでにエクステンデッド版の米国盤BDはリリース済みだったのだが、今回のクライテリオン盤はエクステンデッド版(172分)、劇場公開版(136分)に加えて、ファーストカット版(150分)というバージョンが収録され、すべてディスクが独立して収録(つまり3枚組)という訳のわからない状況になっている。ちなみにファーストカットとは本来はラフカット版なわけなのだが、ここではそういう意味ではなく、最初にロスとニューヨークで限定公開されたバージョンとのこと(私は172分版がそうだと思っていたら違っていた)。おそらくマリックが最初に作りたかったバージョンという意味なのだろうと勝手に解釈している。というのもこれが一番印象が良かったからだ。ただ単に私が世界観を理解できるようになったからなのかもしれないが、駆け足で話がどっちつかずだった劇場版と、やたら間延びした印象だったエクステンデッド版と比較すると、話のバランスがよかったのだ。またクライテリオンの最近の傾向としてフィルムグレインを強調する傾向が多かったのだが、本作はそこまでの感じはせず、特に4Kレストアが施されたエクステンデッド版は、すでにリリースされていた米国盤BDをさらに上回る高画質となっていて、どっぷりとマリックワールドに浸れる。圧倒的な芸術品であり、はまるとスルメイカのように噛みしめる程味わい深くなってしまうので、今夏、我がシアターでリピートされまくることは間違いない。でも万人にはとても勧められる作品ではない(汗)。

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2016年6月19日 (日)

BD『スター・ウォーズ フォースの覚醒』

Bdswep7  リリースからかなり経ってしまっているがとりあえず書いておこう。そういえば作品のレビューすら書いてなかったなあ。ミレニアム・ファルコンの登場とかでは「!」ってなったし、エピ2ほど作品的にはキライではないのだが、そもそもまた惑星級の兵器を作っていることとか、今度の敵は何なんだよとか妙に醒めている自分がいて。とりあえず映像革新がないSWはただのコンテンツでしかない。結局あのワクワクはリアルタイムだからだったんだなあという当たり前の結論に納得してしまった。決定的だったのはディズニーが絡んできたことで、その時点で完全にテンションが下がってしまい、商売っ気丸出しな宣伝展開は今までで一番最悪だと感じた。個人的には海老名のTHXに再び感激できたことの方が出来事としては大きかった。そのあとアトモス、IMAX、日本語吹替とみるたびに退屈していった。まだエピ1でシネコン巡りをしていた時の方が楽だったかも。画質音質はさすがのクオリティ。だがTHX認証はないんだということと、アトモス収録でないことには異論がある方も多かろう。

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